更新日:2025年05月29日 16:38
仕事

「万博で土下座」が騒動に…警備員がカスハラ被害を“受けやすい”ワケ 「ヒエラルキーの下層にいる存在と見られている」

大阪・関西万博の会場周辺で「土下座をする警備員」の動画はご覧になっただろうか。オペレーションの稚拙はたびたび指摘されているものの、「いくらなんでもやりすぎ」と思った人が大半だと思う。実際、昨今社会問題化する“カスハラ”の文脈で大いに話題になったのは記憶に新しい。 さて、万博のようなイベントや、工事現場の交通誘導・商業施設など、警備員が働く現場は枚挙にいとまがない。ただ普段具体的にどんな仕事をしているのかは、当事者以外は把握していないのではないか。 そこで、警備会社を数社渡り歩いた経験を持ち、警備員の日常を、X上に淡々と投稿している「とある施設警備員」(@toarukebiin)という人物に話を聞いてみることにした。リアルな仕事の様子を探っていきたい。
警備員

画像はイメージです

土下座したのは「2号警備員」?

日本の警備業法の上で、警備員は1〜4号に分類される。とある施設警備員氏によれば、今回の土下座騒動の当事者となったのは「2号警備員」ではないかという。 「2号は建設現場や駐車場での交通誘導や、人混みが発生するイベントや祭りなどの雑踏警備をして安全確保を担当するので、今回の件は2号の方だと思います。私は主に1号警備の仕事をしていて、こちらは商業施設やオフィスビルなどを巡回・監視して犯罪や事故を防ぐ施設警備です。万博でも、パビリオンの警備などは1号がやっているはずですよ」 ひとくちに警備員といっても様々で、3号は現金や貴重品の輸送を安全に行う役割、4号はVIPや要人の身辺警備をするボディーガード的な仕事を担うらしい。

ロビーで爪を切る人物に注意したら…

とある施設警備員氏

とある施設警備員氏

今回の「土下座事件」では、「カスハラだ」という指摘が多く上がっている。1号および2号の警備員は、施設・イベントの利用者や来場者と最前線で接することから、常にクレームを喰らうリスクと対峙している。とある施設警備員氏は、カスハラが発生する理由について、世間の潜在的な意識にも要因があるように感じるのだとか。 「警備員をはじめて7年ほどですが、世間からヒエラルキーの下層にいる存在と見られている感覚はあります。私は主に、タワマンの警備をしていますが、居住者には高所得な方が多いからか、その傾向が強いようにも感じますね」 場所が場所だけに小間使いのように扱われるエピソードも。 「つい先日、マンションのロビーからパチンパチンと音がしていて。見に行くと、居住者の若い男性がロビーのソファーで爪を切っていたんです。切った爪を床に散らかしていたので、『ご自身の爪はお持ち帰りください』とできる限り丁寧に優しく話したんですが、『うるっせえな! こっちは管理費払ってんだから、このくらいお前がなんとかしろ!』と怒られてしまいました……」 結局、男性はそのまま立ち去ったためにとある施設警備員氏が後片付けをしたのだという。
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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