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真冬の深夜に酔って外で眠り、終電をなくしてしまった50代男性の奇行

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は42回。  今回は、深夜に出会った酔っ払いのおじさんとのお話です。
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人気のない夜の駅前で出会った、酔いつぶれたおじさん

 深夜の街から明かりが消えて数か月になる。施策が及ぼす影響は仕事終わりの楽しみを飲み会に捧げた社会人や、一旗上げようと立ち上がったばかりの飲食店経営者だけではない。楽しみもなく、金もなく、ただ夜の寒さを凌ぎたい夜間労働者や、日高屋やパーキングエリアで休憩がしたかっただけのトラック運転手からも休息のひとときを奪ってしまった。  警備員をしていた。時間は深夜の12時。人気のない駅前で行われる工事の音だけが微かに聞こえる。微かに聞こえるのは作業が地下深くで行われていたからだ。一見、ただ僕だけが警備員の格好をして突っ立っているだけに見える。  だが、男がいた。少し強い雨が降ったら全く防げないような小さいバス停の庇の下のベンチで、男が眠っていた。バスはきっともう来ない。歳は50くらいだろうか。少し前に飲んで、終電前にキャバクラかガールズバーでも引っ掛けてきたのだろう。この時間に寝てしまうとはそういうことだ。もしかすると夜の店で遊ぶつもりもなかったのかもしれない。8時で全ての店が閉まり、12時には田舎と同じ月が登る今の東京において、我慢の要らない大人のプライベートを探すことは極めて困難だ。

急速に冷えてきた深夜2時

 彼を見て嫌な気持ちはしなかった。かたや酒を飲んで無人駅で眠り、かたや人が寝る間にせっせと働く自分を比べたりはしない。もうこの現実を受け入れている。彼は勉強をし、就活をし、ときに頭を下げ、今こうしてバス停にいる。同じ空の下で。  この日は午前2時を回った辺りから急速に冷えた。風が強い。警備員用の温かかったウインドブレーカーも、どういう理屈か冷たくなってしまった。警備員をしててよく思うのがエネルギー保存の法則についてで、どれだけ温かい格好をしていようとも、外からのエネルギーがなければ徐々に体まで冷たくなってしまう。作業員と違って辛いのは、体の芯に向かって段々と冷えていくので、完全に寒さが体に染み渡ってしまったらそうそう簡単に温め直すことができないということだ。雪山で寝てはならないのも同じ理屈だろう。太陽がいかに偉大かわかる。  深夜の寒さが襲いかかって来る頃、バス停の彼が目覚めた。辺鄙な場所で、もう12時の時点で電車はなかった。僕とは違ってスーツを一枚着ているだけだった。寒さで目覚めたのだろう。ここから彼が「入れる店がない」という事実に苦しめられることになるのだった。
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「寒い、寒いなあ」
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