更新日:2025年10月03日 15:59
ライフ

早起き、90分サイクルは体を壊す!大ウソだらけの睡眠5つの常識

―[異端の常識]―
10年に一度の猛暑。寝苦しく、睡眠不足の人も多いだろう。ヘルステックの進化とともに“正しい睡眠”を求める昨今の睡眠ブームの陰には、ゲノム解析や脳科学の新発見で「ノーベル賞に一番近い」と注目される研究所の存在がある。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構、通称IIIS(トリプルアイエス)だ。脳内物質から睡眠のメカニズム、覚醒の謎に挑む櫻井武教授を訪ねると、正しさを求めるあまり、眠れなくなっている現代人の姿が見えてきた。
短期集中連載  異端の常識01 “正しい睡眠”が 体を壊す!

「睡眠」研究者・櫻井 武

“正しい睡眠”が体を壊す! ×早起き、×90分サイクル……「眠り」研究の最前線

「眠りの重要性が認知されるなかで、“睡眠の質=深い眠り”だけが重要という誤った認識が広がっている気がします。深い眠りは重要ですが、タイパを重視するあまり『短時間でも深い眠りであれば良いのでは?』と曲解してしまう。残念ながら睡眠にチートはありません。睡眠不足を解消するには、十分に寝るしかない。質で量を補完することはできないのです」 OECD加盟国33か国(’21年調査時点)の平均睡眠時間で、日本は7時間22分。最下位だ。 「日本以外に8時間を切っているのは韓国だけ。同じアジアでも中国人は9時間以上寝ています。睡眠は個人差が大きく、最適な睡眠時間は人それぞれ違いますが、日本人の約8割は常時睡眠不足だと指摘されています」 古くは大学受験の“四当五落”、今もはびこる職場の“寝てない自慢”。不眠で頑張ることが美徳とされる日本独特の文化の影響は、根深い。 「中年の社会人の多くが慢性の寝不足『行動誘発性睡眠不足症候群』なのは間違いないでしょう。問題なのは、常態化してしまい寝不足に気づいていないこと。日中に眠気があれば、ほぼ睡眠不足だと思ってほしい。また、特にビジネスマンにはショートスリーパー自任が多いのですが、勘違いであることが多いです。短時間睡眠でパフォーマンスを維持できるショートスリーパー遺伝子を持つ人は、数万人にひとり程度しか存在しないからです」

間違いだらけ!? 睡眠の5つの大ウソ

短期集中連載  異端の常識01 “正しい睡眠”が 体を壊す!

「筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)」の研究棟。世界トップレベルの睡眠医科学研究拠点だ

確かに睡眠時間は短いかもしれないが、日本は世界に誇る長寿国だ。健康に支障がない証左とは言えないのだろうか。 「健康寿命としてはどうでしょうか。それよりも、生産人口層の睡眠不足こそが日本の生産性の低さに直結しているのではないか?という懸念のほうが議論される段階に来ています」 長らく常識とされてきたが、今は否定されている睡眠のウソを5つ紹介しよう。まずは、「90分単位説」。“浅い眠りのタイミングで目覚めるのが良い”と、90分単位で翌朝のアラームを設定するのは実は大間違いだ。 「浅い眠り=レム睡眠と、深い眠り=ノンレム睡眠の周期が90分だからと広まりましたが、そもそもレム睡眠が浅い眠りというのは誤解。 私たちの脳は覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠とまったく違う3種のモードで活動しています。眠りにつくとまずノンレム睡眠に入り、ある程度時間がたつとレム睡眠に移行する。 これを睡眠サイクルといい、睡眠が良好な人はこれを一晩に4〜6回繰り返します。 ただ、1セットの時間は個人差も大きく、必ずしも90分とは限りません。また、深いノンレム睡眠が大切なのは間違いありませんが、深いノンレム睡眠だけに意味があるわけではない。浅いノンレム睡眠やレム睡眠と適切に繰り返されることが重要です」
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夜型の人にとっては迷惑な常識
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さくらいたけし◎1964年生まれ、東京都出身。筑波大学大学院在学中に、血管収縮因子を研究。1998年にテキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターで柳沢正史教授と共に睡眠・覚醒を制御するオレキシンを発見。冬眠に関わるQニューロンも発見した睡眠研究の第一人者。著書『睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム~快眠のためのヒント20~

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