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「参政党ブームは陽キャの推し活です」元“右翼”雑誌編集者が読み解く“新しい右翼”の正体

―[異端の常識]―
「日本人ファースト」というキャッチコピーを引っ提げ、’25年7月の参院選で一躍、注目を浴びた参政党。「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」を理念に掲げており「右派政党」と紹介されることが多い。だが「参政党の支持者は、安倍元首相が呼ぶところの『岩盤支持層』や、『ネット右翼』とは層が明らかに異なる」と指摘するのは、編集者・ライターの梶原麻衣子氏。元“右翼”雑誌編集者として、同党をどのように見ているのか聞いた。
参政党ブームは陽キャの推し活です 梶原麻衣子

編集者・ライター 梶原麻衣子

参政党ブームは陽キャの推し活です

 参政党は’20年4月、「投票したい政党がないなら、自分たちでゼロからつくる」を合言葉に、30~50代の無党派層の掘り起こしを目指して発足した。  梶原氏は保守雑誌である『月刊WiLL』、『月刊Hanada』編集部に足かけ13年在籍、党の結成の前年となる’19年に編集部を離れている。 「初期のボードメンバーとは面識があり、参政党が『保守』の括りに入るという認識は持っていました。ただし’20年のアメリカ大統領選後、トランプ氏が民主党候補者に敗れたことを不正選挙だと同党のメンバーが主張し始めたり、『反ワクチン・ノーマスク』を掲げたりと、結成後は次第に陰謀論色が強まり、初期メンバーが離脱。日頃、保守層は朝日新聞などのリベラルメディアを『歪曲報道をするな』と批判していますが、そういう自分たちがデマ宣伝機になっては元も子もない。なので私も参政党についてはかなり批判的に見ていました」
参政党ブームは陽キャの推し活です 梶原麻衣子

梶原氏の古巣である『月刊WiLL』、『月刊Hanada』では参院選後に相次いで参政党特集が。これも人気の象徴か

自民党の鞍替え組で真の参政党支持は一部

 当初は「イロモノ」と見る向きも強かったが、’22年7月の参院選比例区で神谷氏が初当選。特に国政政党となって以降、自民党をはじめとする既存政党や、外国人参政権に反対する政策を打ち出すようになる。
参政党ブームは陽キャの推し活です 梶原麻衣子

’25年8月1日、参院選を経て臨時国会に初登院する参政党の参院議員たち(写真=産経新聞社)

 批判も集める一方で注目度も高まり、先の参院選では自民・公明与党が過半数割れとなる一方、参政党は自民党、国民民主党に次ぐ742万票の比例票を獲得。月刊『Hanada』では9月号、10月号と続けて神谷氏の手記が掲載された。 「これだけ党の注目度が高まっていれば雑誌として無視するという選択はないでしょう。自分が現役編集部員でもテーマに挙げたとは思いますが、好意的に取り上げることには反対していたと思います。花田紀凱編集長も、党の礼賛というよりは『読者の関心が高いから』という編集判断で取り上げている面が大きいのではないでしょうか」  先の選挙で参政党が獲得した票の一部は、安倍晋三元総理を支持する「岩盤支持層」から流れたと見られている。 「長年の自民党支持者で、安倍元首相への信頼も厚かったある知人は、石破政権に批判的。『今回ばかりは自民党に投票できないが、かといって左派政党は選べない』として、しょうがなく参政党に票を入れたと話していました。知人を含めて、いわゆる『オールド保守』の中でも、参政党を本気で応援しているのは一部だと思います」  自民党支持者の離反が広がった最も大きな契機は、’22年の銃撃事件での安倍元首相の死去後にあったと見る。 「いかんせん、安倍元総理はカリスマ性が強すぎました。保守から右派、さらには勝ち馬に乗りたい人やアベノミクスの恩恵を受けた人まで幅広く引き寄せていましたが、’23年、岸田政権で『LGBT理解増進法』が成立した頃から、保守の一部では疑問の声が起こっていた。首相が安倍政権を自民党内から批判してきた石破氏に交代したことで、支持者らによる『自民党離れ』はさらに加速していきました」
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ネット右翼が陰キャなら参政党は真正の陽キャ
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一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

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