牛丼チェーン三国志、現状での勝者は? “ファミレス化”を進める吉野家、「牛丼以外」がヒットする松屋、信頼回復の途上にあるすき家
安くてうまい、そして早いというデフレの申し子のような存在の牛丼店が、インフレ下で生まれ変わろうとしています。吉野家の牛丼並盛は2013年に税込み280円で提供されていました。現在では498円まで上がっています。
およそ10年で価格は1.8倍になったわけですが、当然所得水準がそこまで上がったわけではありません。牛丼チェーンは新たな価値を創出して客足を伸ばす努力が必要になります。大手3社の戦い方を見ていきます。
吉野屋は2025年から2029年度までの中期経営計画のテーマを「『変身』と『成長』」としています。変革期を迎えているのです。
足元で進めているのが、「新サービスモデル」と呼ばれる店舗への転換。顧客がゆったりと過ごせるよう、客席の間隔を広げ、客同士の視線も合いづらい設計にした店舗へと塗り変えているのです。
外装を従来のオレンジ色ではなく、黒を基調としたデザインに一新した「クッキング&コンフォート店舗」は、ソファ席やドリンクバーも設置しています。グリーンが配置された店内はファミリーレストランに近い雰囲気。一方で迅速に料理を提供するというサービス力は変わっていません。
新型店がファミレス客をターゲットにしているのは間違いないでしょう。競合を牛丼店とするのではなく、ファミリーレストランにしているのです。
吉野家はかつてメニューを牛丼のみに絞り込んで効率的な営業をしていましたが、焼き鮭や豚丼など少しずつラインナップを広げ、現在では季節限定を含む様々な料理を提供するようになっています。
出している料理がファミレス化しているのです。各店舗にフライヤーの設置も進めています。から揚げ定食やから揚げ丼の提供も行えるようになりました。
ガストを始めとするファミリーレストランも値上げラッシュが続いたため、割安かつ素早く料理の提供ができる吉野家は、ファミレス客を奪う潜在性を十分に持っているのです。
吉野屋は2024年度の売上高1378億円を、2029年度に1880億円に引き上げる計画を立てています。この間に240店舗以上の純増を予定。ファミレス化によってターゲットをずらし、店舗網の拡大に動きます。

吉野家
変革期を迎えた吉野家
“ファミレス化”が進むワケ
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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