牛丼市場は“御三家”がシェア80%以上。メニュー多角化を進める吉野家の「狙い」とは
「富士経済外食マーケティング便覧2023」によれば牛丼業界の市場規模は5060億円で安定的に推移しているが、吉野家・すき家・松屋の牛丼御三家が88%と寡占化状態だ。昨今ではウナ丼や牛すき鍋など豊富なメニューで3社が競い合っている。
2004年のBSE問題による牛丼の販売停止による業績不振など苦い経験をしてきた吉野家。現在は、BSE問題時に露呈した単一事業のリスクを回避するためにも、いろいろなメニューを展開して客層を拡大させ、業績はコロナ前に回復しつつある。
メニューが多品種化すると経営資源も分散し、単一事業に集中するよりも利益率が低下する。それでもメニューを多様化させるのは、①BSE問題で主要食材の輸入停止で経営危機に陥ったことへの反省、②収益機会を多様化、③売上と顧客の拡大による経営基盤の強化など、からであろう。
吉野家は、牛丼はもちろん、カレー・唐揚げ・親子丼、ウナギやすき焼き、最近は焼き魚を用いた朝食メニューにも力を入れるなど客層とメニューを多角化している。これらはすき家や松屋も、ほぼ同じ商品戦略だ。吉野家は牛丼はもちろん美味しいが、唐揚げも美味しいとの評価も高く、唐揚げは第76回ジャパン・フード・セレクションでグランプリを受賞している。
専門店が収益機会を増大させるためにコア商品と非定番メニューを広げるのは逆効果になるケースもある。ブランドからの連想としては、牛丼の吉野家というイメージが定着しているなかで、お客さんが牛丼以外のメニューにどれだけ期待しているだろうか?
吉野家ほどの大企業だから社内外の豊富な経営資源を活用し、他のメニューも安く美味しく提供するだろうと期待する人も多いのだろう。結果として、非定番メニューが定番になっているのを見ると、その期待に応えられているのは自明であろう。
1899年に東京・日本橋で牛丼を誕生させ、1971年に日本で最初のチェーン化をスタートさせた牛丼の吉野家(吉野家ホールディングス)は、1980年に会社更生法を申請。同社の未来を分析した。
メニューを多角化させる3つの理由
牛丼一筋から豊富な品揃えの「吉野家」
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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