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佐々木朗希が「クローザー向き」と言い切れる理由。“怪我でマイナー調整”から「異次元のV字回復」を遂げるまで

 ナ・リーグ西地区の覇者ドジャースは、ワイルドカードシリーズでレッズに2連勝。フィリーズが待つ地区シリーズに駒を進めた。レッズとの2戦を振り返ると、スコアは10-5と8-4。どちらもダブルスコアの快勝だったが、やはり露呈したのが救援陣の不安定さだった。

リリーフ陣の脆弱さが再び露呈…

 第1戦は先発したブレーク・スネルが7回2失点の好投を見せたが、2番手アレックス・ベシアと3番手エドガルド・エンリケスが、打者6人から合わせて1つのアウトしか奪えず。その後はジャック・ドレーヤーとブレーク・トライネンがレッズ打線を抑えたが、レギュラーシーズンから続く救援陣の不甲斐なさに、地元ドジャースタジアムにも不穏な空気が流れた。  続く第2戦も先発の山本由伸が7回途中まで2失点(自責点0)の粘投を披露。ところが8回のマウンドに上がったエメ・シーハンは打者5人から1つしかアウトを奪えず。シーハンは本職が先発だけに仕方ない面もあるが、救援陣の厳しい台所事情が改めて浮き彫りとなった。  その第2戦は所属する日本人3選手がそろい踏みを果たした。山本のほか、大谷翔平が6回に貴重な追加点をもたらすタイムリーを放つと、9回には佐々木朗希がポストシーズン初登板。4点差がついていたため、セーブはつかなかったが、わずか11球で3人の打者を退け、ドジャースタジアムに「朗希コール」を沸き上がらせた。  デーブ・ロバーツ監督は試合後の会見で、「彼を信頼しているし、重要な場面で投げることになるだろう」と、今後の佐々木の起用法について言及。トライネンやタナー・スコットらに不安が残る中で、佐々木に守護神の役割が回ってくる可能性は極めて高い。

ロッテ時代の“全盛期”を彷彿とさせる圧巻のピッチング

 第2戦で見せた佐々木の投球内容を改めて振り返っておくと、11球中7球がフォーシーム、残る4球はスプリットだった。フォーシームの平均球速は100.6マイル(約161.9キロ)を記録したが、これは今季レギュラーシーズンでマークした96.1マイル(約154.6キロ)を大きく上回り、ロッテ時代の“全盛期”を彷彿とさせるものだ。  ちなみに、スプリットの平均落差は39インチ(約99.1センチ)で、これはレギュラーシーズン中の42.1インチ(約106.9センチ)に及ばないが、それだけ打者の手元で落ちていたともいえる。特に空振りを奪った2球は低めに絶妙に制球された威力抜群のスプリットに見えた。

リリーバー転向で評価は急上昇

 思えば、佐々木のルーキーシーズンは苦難の連続だった。東京での開幕シリーズでローテーション入りを果たすも、日本とは異なる環境に大苦戦。持ち前のフォーシームがその威力を失っただけでなく、制球難にも苦しみ、レギュラーシーズンはわずか36回1/3で6被弾。ロッテ時代の自己ワースト2022年の7被弾(129回1/3)に並ぶ勢いだった。  また、5月には右肩にインピンジメント症候群を発症。1年目は8試合に先発しただけで、長期離脱を強いられた。  佐々木は長いリハビリ期間中もメジャーに帯同。マイナーで実戦復帰を果たしたのは8月中旬だった。しかし、リハビリ登板の位置づけで臨んだマイナーの試合でも、制球難やフォーシームの球威不足は相変わらず。今季中のメジャー復帰は絶望的とみられた。  ところが、チーム事情もあってマイナーでリリーバーとしてテスト起用されると、2試合を零封。レギュラーシーズン終了間際にメジャー昇格後も新たな役割をほぼ完璧にこなし、ワイルドカードシリーズのロースター入りを勝ち取った。
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佐々木朗希が“クローザー向き”といえる理由
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1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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