タイで現地女性と結婚、起業で失敗した50代日本人男性の末路「あと数年、普通に勤務していれば…」
日本を離れ、南国で暮らしながらゆるっと仕事をしたい——そんな夢を抱く日本人は多いかもしれない。近年はリモートワークの普及もあり、“海外移住”は決して非現実的な選択ではなくなった。だが、いくら収入や生活環境を整えても現地の空気に呑まれ、気づけば道を踏み外す日本人も少なくない。
「最初はただ、タイが好きと言っていただけなんですよね」
話を聞いたのは現在、タイのパタヤに住みながら、チョンブリー県の日系メーカーで現地採用として働く小倉敬一さん(仮名・40代)。彼がそう語るのは、かつて同じ会社で働いていた先輩である“カナイさん”(仮名)のことだ。
「カナイさんは本社勤務で海外で新しい工場が立ち上がると現地に出向して指揮を執ることもありました。タイの工場立ち上げの時期から出張が増え、僕とも顔を合わせる機会が増えました。一緒にランチをしたり、就業後には会社から車で40分ほどにあるパタヤの夜の街に一緒に出かけることもありましたね」
タイといえば、ゴーゴーバーやバービアといった、華やかなナイトライフを思い浮かべる人も多いだろう。そのすべてが密集しているのが、バンコクから車で2時間半のリゾート地、東南アジア屈指の歓楽街・パタヤである。
「日系企業ではトラブル防止のために“海外の夜の店への出入り禁止”を通達していることも多いんですよ。うちの会社も以前は社宅がパタヤにあったんですが、女の子を無断で連れ込むなど、あまりにも問題が多かったため、なくなりました。でも、カナイさんはそんなルールを気にするタイプではなかったんです」
やがて出向期間を終えて日本に戻った後も、カナイさんはプライベートで頻繁にパタヤを訪れるようになった。そのたびに小倉さんは毎晩のように誘われ、夜の街に付き合わされていたという。小倉さんに、驚きの知らせが入ったのはそれから間もなくのことだった。
「いずれはこっちで暮らしたいなんて言ってましたけど……。まだ50代で定年まで全然あったのに、突然、『会社を辞めてタイに住む』と言い出すとは思いもしませんでした。しかも、結婚まですると。相手はパタヤの飲み屋で知り合ったというタイ人女性でした」
カナイさんはさらに驚くことを言い出した。
「なんと、『嫁と一緒に日本食屋をやる』と言い出したんです。しかも、『親戚が飲食をやってるから自信がある』と、なぜか自信たっぷりでした。でも、カナイさん自身にはビジネス経験もないし、ましてやタイ語も話せない。しかも場所を聞くと、パタヤではなく、奥さんの実家近くの田舎町だというんです。日本人も一応住んではいるものの、その多くはリタイア層。パタヤを含めて地方に住むリタイア層は基本的に節約志向で安いローカル飯を食べたり、自炊する人が多いです。よほどコスパが良い日本食屋じゃないとなかなか流行らないので、正直、“大丈夫か?”と思いました」
バンコクやシラチャと違い、現役世代の駐在員やビジネスマンはほとんど住んでいない場所。そのため、飲食店のターゲット層が限られてしまうのだと小倉さんは語る。

小倉敬一さん(仮名)
タイ出向で夜の店にハマった先輩

パタヤで夜遊びにハマる日本人も多い(小倉さん提供写真)
旅行だけでは飽き足らず……ついに退社

夜の誘惑が多いパタヤ
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東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano
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