更新日:2025年11月07日 16:22
仕事

71歳からの再出発、三國清三シェフが明かす「フランス料理店は儲からない」という真実と成功の秘訣

 フランス料理の巨匠・三國清三シェフは、2022年にフランス料理の名店「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店し、今年9月、カウンター8席だけの店「三國」をオープンさせた。  71歳からの再出発、これからは、今までできなかったことに挑戦するのだそうだ。  バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍…激動の時代を見事な経営手腕で乗り越え、グループを大きくしてきた三國シェフ。怒涛の人生を凝縮させた新刊『三國、燃え尽きるまで厨房に立つ』(扶桑社刊)を上梓した三國シェフに、今だから話せる成功の秘訣について聞いた。 『三國、燃え尽きるまで厨房に立つ』書影※本記事は、『三國、燃え尽きるまで厨房に立つ』(扶桑社刊)より一部抜粋・再構成してお届けします。

フランス料理店は儲からないが華がある

「三國」と三國シェフ 身も蓋もないことを言ってしまうと、フランス料理店はとても経費がかかるビジネスで、まず儲からない。  なによりも材料費がかさむ。食材によっては、日本で手に入りにくいため、海外のものにならざるをえないことも多いし、ワインもチーズも揃えなければならない。  さらに従業員は、料理人やサービス担当だけでなくソムリエも置く必要がある。そのうえ、前にも書いたように、質の高いサービスが求められ、インテリアなど店の雰囲気づくりにも気を配らなければならないのだ。  もちろん料金をたくさんいただければよいのだけれど、まさか1人10万円というわけにはいかず、ディナーなら、リーズナブルなところで1万円、高くても3万円くらいに収めなくてはならない。  となると、その中でやれることにはどうしても限りがある。材料費30%、人件費30%、その他諸々の経費30%を引いた残りの10%が利益になるのだが、いい店をつくろうとすればするほど、30%、30%、30%の確保は難しくなり、儲けを圧縮せざるをえなくなってしまうのだ。  そんなことやってられるか、と言いたくなるのではないか。当然のことだけど、こんなうまみの少ないビジネスには、企業はあまり手を出したがらない。

店を育てるためにこそ、儲けは必要

「オテル・ドゥ・ミクニ」と三國シェフ 一方、個人経営で頑張っているフランス料理店の中には、「従業員に給料さえ払えるのであれば、儲けなんかなくてもいい」「好きなお店をやっていけるならトントンでいい」といった、オーナーシェフの情熱や仕事への思いだけに支えられているところも少なくない。  現実はこんなにも厳しいというのに、フランス料理店をやりたいという人はけしていなくならない。それは、フランス料理には、日本料理や中国料理にはないような華があるからだろう。  伝統と創造性を融合させた料理、目でも楽しめるよう工夫されたプレゼンテーション、お祝いや慶事、大切な人との特別な食事の場面など華やぎの中で提供されること、フランス料理は食事を楽しむ文化そのものであること――。  儲からなくても魅力にあふれているのがフランス料理店の経営なのだ。儲かりさえすれば最高なんだけど。
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利益を出すことが自分の店を育てるということ
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1954年北海道増毛町生まれ。中学卒業後、札幌グランドホテルや帝国ホテルで修業し、駐スイス日本大使館料理長に20歳で就任。その後名だたる三つ星レストランで腕を磨き、8年後に帰国。85年、東京・四ツ谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。予約の取れないグラン・メゾンとなる。世界各地でミクニ・フェスティバルを開催するなど国際的にも活躍する一方で、子どもの食育活動やスローフード推進などにも尽力している。2020年にYouTubeチャンネルを始め、登録者数54万人の人気チャンネルになり、Instagram18万人と合わせると72万人を超える(25年8月現在)。22年、惜しまれながらも「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店、25年、カウンター8席の「三國」を開店。
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