休日を利用してコメ作りを始めた男たちを直撃!
―[都会の[田植え男子]の主張]―
都会に住みながら、休日に田んぼで農作業をする人々が急増しているという。現在、コメ農家の高齢化とコメ価格の低下で耕作放棄地が続出、田んぼは荒廃する一方だ。そんな農村の窮状を救うのが都会の「田植え男子」なのだ!
休日を利用してコメ作りを始めた男たちを直撃!
千葉県県匝瑳(そうさ)市にある農園「アルカディアの里」。ここに、都会で働きつつマイ田んぼでコメを栽培する人々が集まってきている。
「自分が作ったコメは、どんな高級なコメよりうまく感じます」と語る木村真さんもその一人。都内の大学院で癌の研究をしている木村さんは、手伝いを数人呼びながらも、ほぼ一人で1反(約1000m2)のコメを育てている。
「コメ農家の高齢化、食料自給率の低下に危機感を持ち、自分の食べ物は自分で作りたいと思ったんです。安全な食糧を今後もずっと手に入れられる保証はないぞと。実際にやってみると、とにかくすごく気持ちがいい。普段は研究室にこもっているので、土や水や生き物など、リアルなものに囲まれることで、気持ちが解放されます。足腰も強くなり、運動不足の解消にもいい」
里山保全のために田んぼを無償で提供
この農園を運営する「アルカディアの会」は7年前に設立、発起人は地元に住む画家の青木栄作さん。周辺農家から土地を提供してもらい、田んぼを無料で貸している。現在は9団体が借りていて、指導を受けながら無農薬米を作っている。田んぼの近くには休憩所も開放され、炊事場を使ったり農具を借りたりもできる。至れり尽くせりだが、なぜ無料でそこまでしてくれるのだろうか?
「先祖から受け継いだ土地が荒廃していることに、農家の人たちも心を痛めているのです。そこで、都会の人にコメ作りを体験してもらいながら、田んぼの保全・里山保全に協力してほしいということで始めました」と青木さんはその理由を説明する。
「かつてはどこにも豊かな里山がありましたが、近年急速に荒廃してきました。エネルギー資源として活用されていた薪や炭に代わってガス・石油が使われるようになり、山の手入れをする人がいなくなりました。そして、コメを作っても儲からず、若者は都会に出ていって働き手がいなくなり、田んぼも荒れてしまいました。昆虫や鳥、植物など、生き物の種類も少なくなりました」
田んぼを復活させ森の手入れを進めると、数年で驚くほど多くの生き物が戻ってきたという。
「ここ3年でホタルも復活しました。川シジミも戻ってきつつあります。トウキョウサンショウウオやニホンアカガエルなどの絶滅危惧種や、キンラン、ギンランなどの希少植物も増えましたし、エサを求めてコジュケイやカワセミ、シラサギなどもやってくるようになりました。森の手入れが進むと、カシタケ、シメジ類など天然のキノコも復活しました」
「アルカディアの里」では月1回、周辺の森の間伐を行っている。
「そもそもこの事業を始めたのは、田んぼを含む里山全体を保全するためです。でも、都会の人にいきなり『里山保全をしたい』と言っても来てはもらえない。最初は『自分たちの食べるコメは自分で作りたい』でいいんです。そのうち、コメを作るにはいい水が必要だ、その水をつくるには森の手入れが必要。そうやって少しずつ里山保全に力を貸してくれるようになればいいなと思っています」
借り手の募集は表立っては行っていない。信頼関係のできた人にだけ貸している。
「最初だけ熱心にやって、放置されても困るので。『この人だったら田んぼを守ってくれる』と見込んだ人にお貸ししています」
「アルカディアの会」代表の青木栄作さん。
「この地域だけでなく、東総地域全体の里山再生をめざしています」と語る
田んぼで作業する木村さん。田んぼには背丈ほど
もあるイネ科の植物、真菰(マコモ)も生えている
田んぼの周りには豊かな森が広がる。この森の手入れを
することで、コメ作りに最適な良質の水を得ることができる
【アルカディアの会】千葉県匝瑳市大寺1767 問:0479-74-0009
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