企業の有志・夫婦で田んぼを借りる
―[都会の[田植え男子]の主張]―
都会に住みながら、休日に田んぼで農作業をする人々が急増しているという。現在、コメ農家の高齢化とコメ価格の低下で耕作放棄地が続出、田んぼは荒廃する一方だ。そんな農村の窮状を救うのが都会の「田植え男子」なのだ!
企業の有志・夫婦で田んぼを借りる
企業の有志で借りているケースもある。環境コンサルティング会社「アミタ」では、総勢60人ほどで、1反弱を借りている。「あみたんぼ」と称するこの田んぼの実行委員会・奥陽介さんはこう語る。
「ウチの会社は環境ビジネスをやっているのに、僕らには一次産業の実体験がまったくないじゃないかと。実際にやってみることで、自分の仕事にリアリティが出て、取引先への説得力も増します。先輩や他部署の人など、社内のコミュニケーションがとれるようにもなりました。社外の人も自由に参加できるので、友人も一気に増えました。僕はここで彼女ができましたよ(笑)」
アミタ東京本社では、この田んぼのコメを使った「あみたんぼ米ランチ」を食べられるという。
「コメ作りを始めてから、食べ物に気を使うようになりました。主食を玄米に替えたり、無農薬の野菜を食べるようにしたり」(奥さん)
IT会社を経営する吉田基晴さんは、出版社社員の嶋田崇孝さんらとともに1反(10畝(せ))の田んぼを借りている。
「私の母方の実家は徳島県の農家でしたが、後継者がいなくなり、江戸時代から受け継がれている里山の水田を廃棄してしまいました。こうした地方の廃棄田を何とかしたいと思っていました。当社は徳島支社があり、徳島でなら例えば週2~3日はITの仕事、残りは農業という働き方もできるのではないかと。水田や環境の維持、そして食の問題に携わっていくため、まず自分が1~2年やってみようと思いました」
「コメを育てるプロセスは仕事や人生にも共通する。チームワークも必要だし、手を抜いたり、中途半端にやっていると自分に跳ね返ってくる。それから、朝早く起きるので、生活スタイルが自然と朝型に変わりました」(嶋田さん)
池袋でオーガニックバーを経営する高坂勝さんは、夫婦で3畝の田んぼを借り、週1度のペースで通っている。家族3人が1年間食べられるコメが穫れるという。
「田んぼを始めて、夫婦仲もよくなりましたよ」と高坂さん。
「ケンカしていても、無心で作業をしていると気持ちも落ち着きますし、お互い協力しないとできない作業なので自然と会話も生まれます。それから、コメ作りって都会の生活よりも男女の役割がはっきりしてるんです。例えば、用水路の水をせき止めたりする力仕事は男の役目。4回挑戦してやっと成功したときには、私の株も上がりました(笑)」
「頼もしかった。この人と結婚して良かったと改めて思いました。この先、何があっても生きていけるなって」(妻の早苗さん)
高坂さんはコメ作りを始めて2年目。今年から「冬期湛水・不耕起栽培」でコメを作り始めた。冬の間に水を張っておき、肥料や農薬を使わず、土地を耕さずにコメを作る農法だ。雑草が少なく、強い稲が育ち、収量も多いということで近年注目されている。
「こんなに楽にできるのかとびっくりしました。去年に比べて、雑草の数が3分の1に減ったんです。去年は2時間かけてやった作業が、今年は30分で済みました。この農法なら、自分たちが食べるくらいのコメは簡単に自給できる自信がつきました。畦には大豆を植え、味噌や納豆も作っています。味噌は米麹を使いますし、納豆を作るのには稲藁を使う。コメと大豆は非常に相性がいいんです」
「出身県の自慢」など、自己紹介も兼ねて一人ずつお題に答えながら田植えをする「あみたんぼ」のメンバー(左)。自分たちで作ったコメが弁当に(右)
【あみたんぼ ブログ】http://amitanbo.blog61.fc2.com/
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