MLB「フィールド・オブ・ドリームス」が4年ぶり復活…18歳だった筆者が“見知らぬ男性の車”で夢の球場へ向かったワケ
現地時間8月13日、米アイオワ州ダイアーズビルにメジャーリーグが帰ってくる。映画『フィールド・オブ・ドリームス』のロケ地に隣接する球場で、ツインズとフィリーズが対戦する。2022年以来4年ぶり、3回目となる「MLB at Field of Dreams」だ。
映画公開から37年。トウモロコシ畑に造られた“夢の球場”は、なぜ今も人を引きつけるのか。
今年は新たに整備された常設球場で試合が行われ、Netflixが世界独占配信する。試合前には25人を超える野球殿堂入り選手も集まる予定だ。その前に、なぜこの場所がこれほど特別なのかを紹介しておきたい。
映画『フィールド・オブ・ドリームス』は1989年にアメリカで公開された。アイオワで農場を営む主人公レイ・キンセラが、不思議な声に導かれてトウモロコシ畑を切り開き、野球場を造る。やがて、そこに過去の名選手たちが姿を現す。
この作品が長く愛されてきた理由は、単なる野球映画だからではない。物語の奥にあるのは、過ぎ去った時間、家族への思い、やり直すことのできない人生への後悔だ。終盤の父と子のキャッチボールは、それらを野球という極めてシンプルな行為に重ねている。
映画は1990年のアカデミー賞で作品賞を含む3部門にノミネートされ、2017年には文化的、歴史的に重要な作品として、米国議会図書館の映画保存対象にも選ばれた。公開から30年以上を経ても、野球ファンだけの思い出にとどまらない名作である。
さらに特別なのは、スクリーンの中の球場が現実世界にも残ったことだ。撮影のためにアイオワの農地に造られたダイヤモンドは、撮影後もその姿を残し、現在まで受け継がれてきた。ファンは実際にそこへ行き、グラウンドを歩き、ベンチに座り、キャッチボールもできる。かつてスクリーンで見たその場所に立つことができるのだ。
映画を見た世代が、自分の子供を連れてキャッチボールをすることもできる。作品が描いた「父と子」や、野球が世代をつなぐ感覚を、自分たちの時間として重ねることもできる。その点で、単なる映画のロケ地とはかなり違うことがわかるだろう。
その“映画の球場”の隣に、本物のメジャーリーグがやって来たのが2021年だった。映画で使われたダイヤモンドから約400m離れた場所に、試合を行うための仮設球場が造られ、ホワイトソックスとヤンキースが対戦。アイオワ州で初めて行われたMLB公式戦は、9回に試合がひっくり返る劇的なサヨナラ決着となった。
この初開催では、選手たちがトウモロコシ畑の中から姿を現した。映画の世界に現実のメジャーリーガーが入り込むような演出で、試合そのものだけでなく「この場所でやる意味」まで強く印象づけた。映画の記憶を再現するだけでなく、本物の試合が新しい記憶を生む。その循環が、この場所を過去のセットで終わらせていない。
翌2022年にも公式戦が行われ、今年4年ぶりに復活する。今回は従来の仮設ではなく、新たに整備された常設球場で行われる最初のMLB公式戦になる。映画のダイヤモンドと常設球場は別々に存在し、来場者はトウモロコシ畑を抜ける道を通って両者を行き来する。
映画を愛した人にとって、そこはロケ地を見るだけの観光スポットではない。スクリーンの中にあったダイヤモンドを実際に歩き、同じ場所でボールを投げる。懐かしい映画の世界に入り込み、自分や家族の新しい思い出までつくれることが、アイオワの田舎町まで人を引きつける大きな理由なのだろう。
2026年は、新たな常設球場でMLB公式戦が行われ、その模様が世界へ配信される。映画の記憶を受け継ぐ舞台は、一度きりの特別イベントではなく、次の世代へ新しい物語を届ける場所にもなろうとしているのだ。映画をリアルタイムで知らない世代に、この場所の物語を届け直す機会にもなるだろう。
私自身も31年前、18歳の夏にこの場所を訪れたことがある。しかも、日本から来た高校球児と間違えられ、見ず知らずの男性の車で“夢の球場”へ向かうという、今振り返ると少し信じがたい経験をした。そのエピソードは後ほど触れるが、まずは今週行われる一戦について解説していく。This view 😍
— MLB (@MLB) August 4, 2026
Phillies vs. Twins at The Field of Dreams is just 9 days away! pic.twitter.com/edTLsb3Pwp
公開から37年を経ても色あせない「夢の球場」の物語
映画のセットを超え、世代をつなぐ場所へ
トウモロコシ畑に本物のメジャーリーグがやって来た日
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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