「AIが答えを出してくれる」は危険? 情報過多のAI時代、経営者にとって必要なたった1つの力
AIの進化によって、経営者が手に入れられる情報は爆発的に増えた。市場分析、競合調査、事業計画、マーケティング施策……。かつては専門家に聞かなければわからなかったことも、AIに質問すれば一瞬で複数の答えが返ってくる。では、AIがあれば「参謀」は不要になるのか。答えは、むしろ逆だという。
『8人の参謀 一人では、たどりつけない景色がある』の著者であり、「経営者の参謀」としても活動する松本隆宏氏と、同書で8人の参謀の一人として登場し、「ITの参謀」として活動する榎本登志雄氏に、「AI時代の参謀」について語ってもらった。

松本:私はこれまで多くの経営者と関わるなかで、ずっと違和感を抱いてきたことがあります。それは、あまりにも孤独な状態で多くの意思決定を抱えている経営者が非常に多い、ということです。
経営者は日々、膨大な意思決定をしています。事業の方向性をどうするのか。誰を採用し、誰に任せ、どこに投資するのか。守るべきか、攻めるべきか。続けるのか、やめるのか。時には会社の未来だけでなく、社員の人生や家族の生活にまで影響する判断をしなければならない場面もあります。
榎本:私も、AI時代になったからこそ、その傾向はより強くなるのではないかと思っています。AIによって、経営判断に必要な情報がものすごく簡単に手に入るようになりました。自分が想定していなかった情報や、自分の思考の範囲を超えた選択肢まで提示してくれる。これは非常に大きなメリットです。
ただ、そこで問題になるのが「選択肢が増えすぎること」なんです。AIは非常に優秀ですが、経営判断の重みや責任まで背負ってくれるわけではありません。最終的に「この会社はどこへ向かうのか」「何を選ぶのか」を決めるのは、経営者自身です。
松本:AIにいろいろ聞いても、「これが絶対に正解です」とはなかなか言ってくれないですよね。結局、AIを壁打ち相手にしながら、自分で結論を出す必要がある。
だからこそ、その結論の質を高めるために、全体を理解してくれている人からアドバイスを受けることが重要になる。AI時代は、ヒントが増えたからこそ、参謀の価値が高まる時代なんじゃないかと思います。
榎本:これまでなら、自分の経験や理念、ビジョンを軸に「これをやろう」と決めていたところに、AIから次々と新しい情報が入ってくる。すると、自分が本来大切にしていたものを見失ってしまう可能性もある。
情報が増えることは、必ずしも経営者にとってプラスだけではありません。AIから出てくる情報が間違っているという話ではなく、「自分にとって今必要な情報なのか」を判断する必要があるということです。
松本:経営というのは、税務や法務、資金繰り、人材、組織づくりなど、本当にさまざまな領域が絡み合っています。本来であれば、それぞれの領域に専門家が関わっていて当然だと思います。
だから複数の専門家が必要であり、それも、ただ専門家がバラバラに並んでいればいいわけではありません。経営者の横に立ち、全体を見ながら必要な支援を統合し、導く存在が必要ではないか――私はそう考えています。
AIの進化によって、経営者を取り巻く環境は大きく変わっています。そんな時代だからこそ、「参謀」の必要性は高まっていると思います。

松本:世の中には、「ティーチング」「コーチング」「コンサルティング」という言葉がありますよね。簡単にいえば、ティーチングは、何もわからない人に知識や方法を教えること。コーチングは、問いを通じて思考を深め、目的地に向かって導いていくこと。コンサルティングは、問題解決や仕組みづくりに落とし込むもの、といえます。
私は、コンサルティング、ティーチング、コーチングの3つを兼ね備えているのが「参謀」だと思っています。経営者が本当に求めているのは、「状況に応じてこの3つを行き来しながら、経営者の横に立ち、経営者と同じ景色を見ながら、思考・戦略・行動をつなぎつつ、意思決定に関わる存在」であるということです。
榎本:一般的なコンサルタントは、知識や手法、問題解決の方法を教えることが多い。一方で参謀は、必要な情報や選択肢を整理したうえで、問いや対話を通じて、経営者自身が意思決定できる状態に導く。「正解を教えるのがコンサルタント、経営者が決められる状態をつくるのが参謀」ということですね。
松本:また、その人自身が事業をしていることも重要です。自分が事業をやったことがない人間が、事業家の経営について本質的な助言をするのは難しいと思うんです。
榎本:経営者の悩みって、表面的な問題だけではありませんから。資金繰り、人材採用、社員の退職、組織づくり……。経営していれば、いろいろな問題が起こる。実際に経営したことがなければ、そのとき経営者が何に悩み、何を恐れているのかまではわからない。
だからこそ、経営者にとっては「自分が進みたい世界を、すでに経験している人」に相談することが重要なんだと思います。

◆AIによって「正解」ではなく「選択肢」が増えた
◆参謀は「正解を教える人」ではない

「地主の参謀®」として活動する松本隆宏さん
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ライフマネジメント株式会社代表取締役。1976年、神奈川県相模原市生まれ。高校時代は日大三高の主力選手として甲子園に出場。東京六大学野球に憧れ法政大学へ進学。大学卒業後、住宅業界を経て起業。「地主の参謀」として資産防衛コンサルティングに従事し、この10年で数々の実績を生み出している。また、最年少ながらコンサルタント名鑑『日本の専門コンサルタント50』で紹介されるなど、プロが認める今業界注目の逸材。
ラジオ大阪OBC(FM91.9 AM1314)にて、毎週水曜日19:45~20:00「松本隆宏の参謀チャンネル®︎」を放送中。
最新刊『アスリート人材の突破力 ~才能を引き出す気づきの法則~』のほか、『The参謀 ~歴史に学ぶ起業家のための経営術~』(游藝舎)、『地主の経営』(マネジメント社)などがある。
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