MLBのボールに練りこまれる「秘密のスパイス」とは?
メジャーリーグの歴史上、過去にたった一度だけ、“悲劇の殺人”が起きたことがある。1920年8月16日、5回表。ヤンキースのカル・メイズが投じたカーブが、インディアンズのレイ・チャップマンのこめかみを直撃。翌日、チャップマンは帰らぬ人となった。
チャップマンの事故後、MLBのルールブックには「ボール表面のつやは適切にこねられた上で、除去されていること」という一文が加わった。
審判団たちはカミタバコ、靴みがき粉、内野の土に水を混ぜるなど、あらゆる物質で純白のベースボールを「こね」、二度と投球がすっぽ抜けることのないように最適な「滑りどめ策」を講じたそうだが、完璧な滑りどめには出会えなかったという。
◆「ブラックバーン家の近所の泥」が「魔法の泥」に
1938年。フィラデルフィア・アスレチックス3塁コーチのリナ・ブラックバーンは、自宅近くの河川の泥が、ボールの滑り止めに適していることに気づいた。リナがその「自宅近くの河川の泥」でこねたボールを審判に見せたところ、その評判は瞬く間に口コミで広がり、アメリカン・リーグ全球団が「ブラックバーン家の近所の泥」でボールをこねるようになった。
リナが亡くなった1950年代後半には、その泥は「マジック・マッド(魔法の泥)」と呼ばれるようになり、ナショナル・リーグはもちろんのこと、ほぼ全てのマイナーリーグ、独立リーグ、大学、高校野球で使われるようになったという。
それ以来、半世紀以上の月日を経た「ブラックバーン家の近所の泥」は、最初の発見者のリナ・ブラックバーンの親友だったビントリフ一家に伝承され、現在はMLBの全球場で、毎試合前につや消し用としてコネコネされているのだ。
毎年、7月4日の独立記念日が過ぎると、アメリカ全土は“Boys of Summer(男たちが野球に興じる夏)”の季節になる。その時期になると、無数に舞い込む取材依頼や写真撮影を全て断ったビントリフ一家が、彼ら以外は誰も知らない「秘密のある場所」で何十杯ものマジック・マッドをすくう。その泥には、一家秘伝のタレならぬ研磨剤が混ぜ合わされ、夏が終わる頃には、翌年、野球大国アメリカのすべてのボールをこねるに十分な量の「マジック・マッド」が出来上がる。
ニュージャージー州デラウェア川のどこかで採れた泥を加工した奇跡の泥は地質学(ジオロジー)と地理学(ジオグラフィー)の奇跡の産物という。イチローがこれまで放った全てのヒット、ダルビッシュがこれから奪う全ての三振。すべての物語は「マジック・マッド」と共に刻まれる。
●「ブラックバーン家の近所の泥」の詳細はこちらから。
http://baseballrubbingmud.com/ なんと24ドル~通信販売もしている! ◆衝撃!審判が「秘密のスパイス」を注入してボールをこねる様子を本邦初公開 シアトル・マリナーズの審判係、Matt Wolcottさん(45歳)は、毎日7~8ダースのまっさらなボールを、投手が投げやすいようマジック・マッドをつけ適度にコネる。15歳でこの仕事に出会い、31年目のシーズン。無数のボールを今日もひたすら磨き続けるマットの”神業”を、動画で日本初公開! 【動画】はこちら⇒ http://youtu.be/jVUhVVuFj6c
<取材・撮影・文/スポカルラボ(http://www.scl.tokyo/)>
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