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サマータイムは節電効果なし、睡眠障害の危険も

 
 官公庁や企業が相次いで導入しているサマータイム。始業を1時間早くすると節電になるというのだが、素朴な疑問を感じないだろうか? 電力使用のピークは午後1~4時頃。終業時間が午後5時から4時になったところで、ピーク時の節電効果は薄いのだ。なかには「夜8時にオフィスにカギをかけられる」とか「涼しい午前中は職場のエアコンを消される」などという会社もあるそうで、これなど“ピーク時の節電”とはまるで関係のない努力としか言いようがない。
電力使用

東京電力HPに毎日出る電気予報。節電努力のおかげでけっこう足りてるじゃないの。

実は、「効果がない」どころか「逆効果」だと指摘するのは、独立行政法人・産業技術総合研究所の井原智彦研究員。理由は、考えてみれば当たり前なのだが、「帰宅後に家でエアコンをつけるから」。同研究所のシミュレーションでは、午後4時に終業した場合、電力需要はオフィスで10%減、集合住宅で27%増、一戸建てで23%増、全体として4%増という結果だった(「夏季における計画停電の影響と空調節電対策の効果」2011年6月)。会社に人を集めてまとめて冷やすほうが、社会全体として効率がいいのだ。しかもオフィスでは空調熱源の3割程度を都市ガスで駆動しているそうで、そのメリットも生かせなくなるという。 要は会社にとって多少節電になるだけで、家庭にとっては余計に電気代がかかるのがサマータイムなのだ。
デジタルサイネージ

都心の駅ではデジタルサイネージ(電子掲示板)をズラズラ並べて節電を呼びかける倒錯した風景も( 撮影/ysishikawa )

以前からサマータイムに反対を表明しているのは、睡眠医療に関わる医師などが参加する「日本睡眠学会」である。一時的に時間を前倒すことで睡眠リズムや体内時計が変調をきたして、睡眠障害の原因になるという。 また、1時間早く起きても、1時間早く寝られない場合も多いので、現実的には「寝不足」状態になる、と同学会は指摘する。アメリカのサマータイムは、社会全体で時計ごと1時間早めるのに対して、日本は時計はそのまま一部の会社が前倒すだけ。取引先や家族がふつうの時間で動いていれば、自分だけ早く帰って早く寝るわけにはいかないだろう。 電力中央研究所も、4月の段階で「サマータイムは休日分散の10分の1程度しか節電効果がない」というシミュレーション結果を発表している。 つまりサマータイムは大騒ぎしてやるほどの効果はない。だが、上記のような試算結果は一部の新聞に小さく載る程度。日本経団連や官公庁が音頭を取っている以上、チャチャを入れにくいのだろうか? ほかにも、「ピーク時ではない夜の街灯を減らす必要はあるのか?」「都知事が騒ぐほど自販機は電気を食うのか?」など、わからないことは多い。7/26発売の週刊SPA!8/2号「やりすぎ節電 トホホ白書」では、「無理・無駄・無意味!」な節電ムーブメントを検証する。  (文/増田結香)
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