選挙が終わると届く請求書の数々 落選議員が語る【民主党崩壊】の理由Vol.1
2009年、民主党政権の誕生により「二大政党制」は実現したように見えたが、それも泡沫。昨年末の衆院選における民主党の敗北によって、日本の政治がどういう政治体制を志向するのかすら見えない状態となった。これを評論家の荻上チキ氏は「民主党の憂鬱」と表現。一方、エコノミストの飯田泰之氏は金融緩和&大規模な財政出動を盛り込んだ「アベノミクス」に一定の評価をしつつも、その政治スタンス、そして、安倍自民に対抗する政党もまた「右ばかり」という現状を危惧する。
日本にもリベラルの芽を育てなくてはならない――。そのいちばんの候補となるべきは、それでも民主党である。民主党再生に必要なものは何なのか? なぜ、民主党は躓いてしまったのか?
週刊SPA!2/5・12合併号「週刊チキーーダ!」では、先の衆院選で残念ながら議席を失った民主党前衆議院議員の3名の鼎談を掲載。
参加してくださったのは、民主党結党から参加、菅内閣で副大臣も務めたベテラン・池田元久氏。“小沢ガールズ”として初当選を果たすも、先の選挙では石川2区から東京15区へ国替えし、日本未来の党に敗れた田中美絵子氏。消費税増税などに毅然と反対の意を唱え続けた宮崎タケシ氏の3名。
本誌では紹介しきれなかった、“ほぼ全文”をここに掲載。「民主党崩壊」への道筋が語られる!?
◆目下、“敗戦処理”中
荻上:昨年末の衆院選では結果が見えた直後から、「今回の選挙は民主党の敗亡であり、自民党の勝利ではない」と言われました。二大政党制というのは、リベラル陣営と保守陣営が、それぞれの議論を応酬しながら社会を前進させていくというのが一応の理念だと思うのですが、リベラルパートの脆弱さが露見した選挙となったようにもおもいます。
つまり、民主党の敗北というより、「ニッポンにリベラル陣営ってあったの?」と思うくらい、「自民党ではない党」の存在が見えなくなったわけです。今回の「民主党の憂鬱」が意味するのは、民主党という政党の問題だけではないのでしょう。
飯田:二大政党制は中道右派と中道左派の戦いというのが良いあんばいだと思うのです。現状では政権をとった自民党・安倍政権は自他共にみとめる保守。そして、最近の世論調査(朝日新聞 2013年1月20日)ですと、今夏の参院選の比例区投票先について、自民が40%、日本維新の会が16%と続き、民主とみんなの党が7%。民主党を除けば保守政党ばかりです。僕自身の政治スタンスとしては、経済は保守寄り、社会政策はリベラルなので、この状況は非常に危惧するわけです。その意味でも、民主党には是非再生してもらいたい。そこで、そのためにはどうしたらいいのかを、その失敗の原因とともに皆さんとお話しできればと思っております。
荻上:というわけでまずは、落選をどう受け止めているのか、そして今、何をしていて、これから何をしていくのかをお聞かせいただけますか。
田中:事務所を引っ越しいたしまして、新しい事務所を構えたところです。スタッフ全員やめてしまったので、私ひとりで、いろいろな手続きをしつつ、4年後の衆院選を見据えて政治活動を続ける。そういう毎日を送っております。
飯田:田中さんは、石川2区から東京15区へ国替え出馬ですよね。次の衆院選で東京15を基盤に活動されるということですか。落選中の議員がやる政治活動とはどういったことになるのでしょうか?
田中:国替えをしてきた人間ですから、新人同然、ゼロからのスタートです。まず、基礎固めをしっかりしておく、ということですが、それも特別なことはなく、これまでどおりの活動です。支援者の方への挨拶まわりですとか街頭演説、集会の開催、町内会に顔を出すという基礎的な、ドブ板ですね。そういう基礎的なことを一から始めております。
宮崎:選挙って、ホント、戦後処理が大変なんです。特に予期せず行われる衆院選などは、事前準備も十分でない状態で選挙選に突入するので、大体、無茶苦茶になります。それでも勝てばいいのですが、負けると誰もいなくなる(笑)。選挙が終わるとよくわからない請求書がバンバン届いたりして、その処理だとか、事務所の片付けとか、あとは挨拶まわり。今はその戦後処理の最終段階です。
私も田中さんと同じく次の衆院選に焦点を合わせ、ドブ板の活動を続けて再起を期して頑張るというところです。あとは少なくとも、自分と妻と子供を養うとともに、秘書を一人くらい雇えるくらいの経済基盤をどう確立するかという話ですね。
荻上:通常、その間の経済基盤は何なんですか?
池田:それは各自各様ですよ。
宮崎:ただ、保守の方は、やはり基本的にエスタブリッシュメントなんです。まあ、民主党内でも、経歴だけはエスタブリッシュメントの人はたくさんいるんですが、その中身が違う。
保守のネットワークというのは、県知事や市長を押えてます、県議会や市町村議会押えてますというピラミッド構造。それがまさに癒着の源泉でもあるんですが、例えば、どこかの企業に入って顧問料を貰うとか、献金もそれなりに集まるとかいう世界になる。しかし、我々はもともと献金は集まらないし、むしろ企業献金いらないみたいな人もたくさんいたから、正直、皆さんかなり苦しいと思いますね。
もともと民主党の体質、理念というものが、旧来型――政治を家業にしているとか、既得権益をもった地元の名家出身とかではなく、若くて、才能のある人間が地道に地元を歩いて、ドブ板の活動をして勝つというのをやってきたわけですから、こういう状況になると厳しいですよね。しかも、今回のような種類の敗北は始めてですから、今後、どうなるかもわからない。それでも、それぞれの方がそれぞれの方法で生き抜くしかありませんから。
⇒Vol.2『民主党に貼られた「ウソつき」というレッテル』に続く https://nikkan-spa.jp/382123
【池田元久氏】
1940年、神奈川県生まれ。NHK政治部記者を経て、1990年の衆院総選挙で、始めは無所属、途中より日本社会党公認として出馬し初当選。1993年に僅差で落選。社民党を離党し、1996年、民主党の結党に参加する。1998年の金融国会を主導。菅内閣では財務副大臣、経済産業副大臣を務める。民主党デフレ脱却議連会長。http://www2u.biglobe.ne.jp/~IKEDA/
【宮崎タケシ氏】
1970年、前橋市生まれ。上毛新聞記者を経て、2009年の衆院選で群馬1区で初当選。デフレ脱却議員連盟事務局などの役職を務めた。ライトノベル作者というもうひとつの顔も(ペンネーム鷲田旌刀)http://www.miyazakitakeshi.jp/
【田中美絵子氏】
1975年、金沢市生まれ。会社員、添乗員、議員秘書などを経て、2009年衆院選で、「小沢ガールズ」として石川2区より出馬。小選挙区では落選するも比例で復活当選。先の選挙では東京15区へ国替えし出馬するも落選。http://www.tanakamieko.jp/
<構成/鈴木靖子 撮影/山川修一>
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