更新日:2013年03月02日 18:03
スポーツ

【WBC日本代表】虎キチが浴びせた“アウェイ”の洗礼

「阪神に負けたら日本代表もヤバいで~」。試合の2時間前、京セラドーム大阪からほど近い、九条の中華料理店。腹ごしらえをしていた記者のまわりで、常連客のオッサンたちがチューハイを飲みながら話していた。(まさかそんなことはないだろう……)そう思っていた記者だが不安は現実となった。  広島に敗れ、オーストラリアには連勝したものの、一向に調子の上がらない日本代表。2月26日のWBC強化試合・日本代表vs阪神タイガースの試合を現場で観戦した記者。声援の後押しで日本代表を勝たせてやってくれ……記者の願い虚しく、そこには全く予想しなかった「虎キチのための祝祭空間」が広がっていた――。  背番号入りのTシャツやユニフォーム、メガホンなどの日本代表のグッズ販売が大々的に行われているにもかかわらず、大阪ドームに詰めかけた観客はほとんどがタテ縞のユニフォーム姿。タテ縞の応援ニッカポッカに上半身は「稲葉Tシャツ」という”折衷派”も見られたが、ほとんどが”純血”のタテ縞姿、予想の範囲だったが、試合になれば日本代表を応援し、温かい雰囲気に包まれるだろうと思っていた。  しかしその幻想は早くも打ち砕かれる。記者の横に座った60代と思われる初老のオッサンは席に座るやいなや「今日は阪神が勝って、トリ(鳥谷)が1本打てば申し分なしや!」と叫んだ。すると周りの観客は拍手喝采、笑いに包まれた。  平日の夜、外は雨、しかし観客はほぼ満員。大阪ドームを埋めた観客たちは、阪神の攻撃には大声援、一方の日本代表には静寂するという、甲子園球場おなじみの雰囲気に。記者の前に座った、揃いの赤星のユニフォーム「2013 SPRING CAMP」というロゴが入った帽子を被った50代と思しき女性2人組は、黄色いメガホンをバカスカ打ち鳴らしながら、「アベやろ、チョーノやろ、サカモトはイケメンやから許してやるけど、打てんのはみーんな巨人や」と辺りに聞こえるようにささやき合っていた。  日本代表に対する阪神ファンの「温かい声援」は、鳥谷が打席に立ったときのみ。大拍手で迎えられるも2三振と奮るわなかったが、7回の二塁後方へのハーフライナーにダイビングキャッチすると「飛び込まんでも捕れるやろ~阪神ファンに乗せられたファインプレーやな!」とチクリとする隣のオッサン。  ふがいない日本代表に、同情する虎キチも。6回2死1塁、左腕の森福から完璧にモーションを盗み、盗塁を決めた大和には「(キューバや韓国など)他国のスコアラーも来てるのに、弱いところを晒すなんて可哀想やろ」と高度なヤジが飛んだ。  7回裏。お馴染みのジェット風船が見られるかと思いきや、大会規定で禁止とのアナウンスが。代わって流れたのは大リーグではおなじみの「Take me out to the ball-game(私を野球場に連れてって)」。「そんな英語の歌なんか唄えんわ~」というオッサンの声を汲むように、スタンドでは六甲おろしが高らかに唄われた。  試合は中盤に1点をもぎ取った阪神が、日本代表を0点に抑えたまま終盤に突入するという「息を呑む接戦」に。これが阪神ファンに火を点けたのか、応援はますます白熱。開幕一軍入りを目指す、期待の若手投手陣が6回、7回、8回、そして9回と4回連続で日本代表を三者凡退に抑えると、スタンドはガッツポーズ、バンザイ、スタンディングオベーション、さまざまな熱狂に包まれた。  ライトスタンドの応援団も「完璧な試合」に冷静さを失った。8回裏2死1、2塁のチャンスに満を持してチャンステーマが登場。「●●(相手チーム名)倒せ」と唄うところで、なんと「讀賣倒せ!」と大合唱したのだ。主催者を皮肉ったのか、永遠のライバルへの罵倒か、真意は定かではないが、球場が大いにざわついたのは確かだ。  結局阪神は、日本代表を散発の3安打、1-0の完全勝利。微妙な顔をするマスコミ陣や大会関係者を尻目に、六甲おろしを唄う虎キチたち。「今年こそ優勝や!」「あったりまえや!」という声もあちこちからこだました。  金本アニキのTシャツを着た小学生の男の子は「日本は阪神より弱いなぁ」とお父さんと笑い合っていた。  切れ味するどいヤジを再三飛ばした隣のオッサンに日本代表について話を聞くと「上本がなぁ…心配やなぁ」と負傷退場した阪神の選手に触れながら、「ケガなくやって欲しいね。とにかくみんなケガなく、4月の開幕を迎えるようにね」と妙に改まった、かつWBCとはあまり関係のないコメントを頂いた。 ⇒【写真】スポーツ紙3紙・東西版を読み比べ『スポニチ』
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=397860

翌27日のスポーツ紙3紙読み比べ。『スポニチ』(右・関西版)は今シーズンから加入、この日、在阪ファンにお目見えになった西岡が1面。右の東京版の悲観的内容とは大違いである。

⇒【写真】スポーツ紙3紙・東西版を読み比べ『ニッカンスポーツ』https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=397861

『ニッカンスポーツ』は関西版(右)でも東京版(左)でも山本JAPANにダメ出し

⇒【写真】スポーツ紙3紙・東西版を読み比べ『デイリースポーツ』https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=397862

『デイリースポーツ』は、東西を問わずこの日負傷退場した上本を心配。アツいぜ!

 ホームなのに「アウェイの洗礼」を受けてしまった日本代表。これを糧に今日から始まる1次ラウンド、東京で開催される2次ラウンド、そしてアメリカ・サンフランシスコで行われる決勝ラウンドに進出して3度目の世界一をもぎ取ってほしい。 <取材・文/日刊SPA!WBC取材班>
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