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プロレス団体を統合する協会は必要か? 3賢人が激論

 一時は完全に冬の時代を迎えていたプロレス業界だが、ここにきて復調の兆しが! これまで35歳以上の古参プロレスファンが目立った会場に、子供からイケメンレスラーを目当てにした女性の姿も増え、ファン層の拡大も顕著だ。この盛り上がりは本物なのか? そこで、実は幼少期から生粋のプロレスファンである精神科医の香山リカ氏と、プロレスライターの斎藤文彦氏、同じく鈴木健.txt氏の3賢人が激論を交わす!【後編】 ⇒【前編】はコチラ
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鈴木 健.txt氏

鈴木 健.txt氏

――新日本プロレス以外の団体で活況なところはありますか? 鈴木:表現力の高い選手の多いDDTは両国国技館から日本武道館へと、明確にステップアップしています。お客さんの男女比は7:3ってところかな。後楽園ホールでは北側をレディースシートにするなど、女性ファンを積極的に取り込んでいますよ。 ――ちなみに香山さんはマイバッハ谷口(※4)という選手に夢中だそうですが? 香山:もともと、私は怪奇派が好きなんですよ。怨霊(※5)とか人生とか……。今の新日本って、ディズニーランドみたいで、花道から動きの一つひとつまで管理・計算されている気がするんですよ。個人的には、そこでプロレスラーの“ふとした素顔”が観たい。 鈴木:それは観ることできますよ。どうしたってポロッと人間性は出てしまうから。素の感情、怒り、しぐさ……感極まって思わず泣き出す棚橋選手とかね。
マイバッハ

香山氏は自ら応援幕を作るほどマイバッハ選手に熱を入れている

――では改めて、プロレス人気再興の可能性をそれぞれ聞かせてください。 香山:可能性はあると思うけど、話を聞いていたら明るくて健康的なプロレスって私が望んでいるものではない気がする! ……そうしたら居場所がなくなっちゃうかもなあ(笑)。 斎藤:新日本のカウンターとして、うさんくさいプロレスもまた出てくると思うよ。かつてのFMWがそうだったように。そこがプロレスというジャンルの奥深さだとも思うけどね。そういえば、今年の2月に高校生や柔道女子日本代表に対する体罰問題に関して、スタン・ハンセン(※6)が朝日新聞のインタビューに答えていたんですよ。まさにプロレスが教育的見地に立った瞬間です。近頃は大メディアのプロレスに対して抱いているイメージも変わっているかもしれませんね。 鈴木:小橋選手の引退で三銃士・四天王(※7)の時代が終わろうとしているけど、試合のクオリティでいったら棚橋選手やオカダ選手も三銃士、四天王と比べて劣るものはない。全日でいえば諏訪魔選手、DDTの飯伏選手、ノアもKENTA選手が支持されています。
飯伏選手

DDT看板選手の飯伏(右)。人形レスラーのヨシヒコなど濃い選手が豊富

香山:でも、団体を統合する協会みたいなものは必要じゃない? 医者の世界では昔、「医局制度」というものがあって、開業するのに教授の許可が必要だった。で、制度を廃止したらあっという間に医療全体が崩壊しちゃったんです。このままじゃプロレスも質の悪い団体が増えちゃうかも。 斎藤:ひとつの協会にすることはないよ。価値観も多種多様化しているし、無法地帯だとしても自然に淘汰されていく。なんだかんだ言っても、プロレスはアメリカで150年、日本では60年続いていますから。いまだに少しずつ精度を上げている。スポーツ芸術のジャンルとしては不滅だと思いますよ! 飯伏選手※4:マイバッハ谷口 ノアで活躍する怪奇派マスクマン。ヒールながらペーソス溢れる佇まいに徐々にファンが増加している ※5:怨霊とか人生とか 怨霊は666、(新崎)人生はみちのくプロレスに所属する個性豊かなキャラクター派レスラー ※6:スタン・ハンセン あえて説明しよう。新日本プロレスや全日本プロレスを渡り歩いたテキサス出身の人気レスラーで、テンガロンハットと「ウィー!!」という雄叫びがトレードマークだった ※7:三銃士・四天王 新日本プロレスに所属していた武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の「闘魂三銃士」、および全日本プロレスの三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明による「四天王」を指す。三銃士は東京ドームを中心とした大会場プロレスの中心的存在。四天王は極限ギリギリの試合展開でファンを熱狂させた <激論メンバーのプロレス3賢人> 【鈴木 健.txt氏】 ’66年、東京都生まれ。『週刊プロレス』黄金時代を支えた記者の一人。’09年よりフリーの編集ライターとして音楽、演劇でも執筆。ツイッターのアカウントは@yaroutxt 【斎藤文彦氏】 ’62年、東京都生まれ。早大大学院スポーツ科学研究科修了。プロレスライター、大学講師。『週刊プロレス』にて連載を持つ。ツイッターのアカウントは@Fumihikodayo 【香山リカ氏】 ’60年、北海道生まれ。精神科医。リングサイド・ドクターを務めたこともあるプロレス好き。写真のキャップとTシャツは、現在ハマっているマイバッハ谷口選手のグッズ。日刊SPA!で不定期連載『人生よりサブカルが大事――アラフィフだって萌え死にたい!』 ― 激論 プロレス人気は再燃するのか?【2】 ―
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