会議で損をする秀才、得する凡才
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組織の人間が一同にかえす会議は、普段はあまりやりとりすることもない上司に対しても、直接、自分の考えや日頃の成果をアピールする数少ない機会であるのは間違いない。しかし、そこには意外な落とし穴もある。これまでのべ2000人を超えるリストラにかかわってきた経営コンサルタントの中沢光昭氏は「社内の会議で気の利いた発言、ズバッと核心を突く発言、笑いを取る発言をして際立った存在感を示せば、評価が上がるのではないか。そんなふうに考えるのは素人で、むしろリストラのリスクを上げることにもなります」と警鐘を鳴らす。
「スペックがまったく同じ社員、AさんとBさんがいたとします。学歴もほぼ同じ、同期入社でポジションも同じくらいだったとしましょう。Aさんは会議の場では何一つ発言しない沈黙タイプ。ただ、会議中の態度はたいへん行儀が良い。会議室に誰よりも先に入室し、背筋を伸ばして凛とした態度で着座しています。Bさんは、積極的に発言をして会議を牽引する饒舌タイプ。ただ、会議室に入ってきて『書類忘れた』『コーヒー買ってこよう』などといってまた部屋を出て、遅れ気味に戻ってきたりします。どちらのほうが、評価が高くなると思いますか? イケてる発言を連発して会議を実りあるものにしているBさんのほうが評価されると思いたいところですが、上からの評価は同等といったところです」
会議の場面では目立つのはBさんのようにだが、それが直接、高評価に繋がっているとは限らないという。
「会議でいい発言をするのは当然、プラスですが、態度で減点されてプラスマイナスゼロ。下手すると黙っているだけの社員と同じ評価か、それ以下になってしまうのです。会議日程を確認するリマインダーメールが届いても、社内評価が高い沈黙タイプ社員は、出席の返事をすぐに返す傾向にあります。会議では何も発言しないくせに、『出ます』と即意思表示する。実に機敏です。自分の発言に自信がある社員にありがちなのが、『どうせわかっているんだから』とリマインダーメールへの返事が遅かったり、あるいは返信をしなかったりします。言ってみれば、『だって、なんだかんだ言ったって、俺って会社に必要でしょ?』という驕りがそうした行動に出てしまうのでしょう」
その種の「驕り」に対しては誰しも敏感なため、態度には十分に注意する必要がある。
「『シリコンバレーでは普通に行われていることだけど、うちの会社でも試してみる価値はあると思いますよ』、『ハーバード大学のビジネススクールでは80年代から実践されていることではありますが』、『中国人のメンタリティを考えるとやっぱり……』などと偉そうに自分の知識をひけらかす人、周囲にいないでしょうか? それまで会議の議論に参加していなかったくせに、会議終盤にこうした批評家気取りの発言をするのは命取りです。知識をひけらかすだけで『だからどうしたらいいのか?』というヒントが最低でもないと、他人事という印象を与えてしまい、『なんだ? 偉そうに』と思われ、大きな減点となります」
中途半端に優秀で、できない理由を集めて主張したりする「評論家タイプ」はもっと嫌われるとのことだ。
「抽象的な正しいことをいうのは、もっとも簡単なことです。より具体的な話でリードしていかないと、組織のなかでは認められません。具体的な話をできるための前提として、『いざとなったら自分でもできる・自分がやる』という確信が必要であり、そのためには相応の苦労や経験と、学習するための謙虚さが必要です。自分では何もできないくせに部下には偉そうに指示をする評論家タイプは、周囲から嫌われ、いざリストラ候補の選定というタイミングでは『この人は協調性やコミュニケーションスキルが乏しいから不要』ともなります。あと、会議で正論を述べるのも、実は非常にリスクが高いので注意が必要です。ものの言い方には細心の注意を払わなくてはいけません。『正しいことを言うこと』=『ほかの誰かを否定すること』につながらないように気をつけましょう」
これを回避するには、まず疑問形で主張すること。抽象的な「べき論」だけは絶対にやってはいけない。 <文/日刊SPA!取材班>
【中沢光昭氏】
経営コンサルタント。投資会社、経営コンサルティング会社などにおいて企業再生、成長を見据えた企業変革に約20年従事したあと、独立。現在も企業再生をメインに活動を行う。これまでに30社以上、計2000人以上のリストラに直接関わってきた。著書『
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