ソニーを離れたエンジニアが咲かせる「花」 【清武英利渾身リポート】vol.2
近年、心臓部ともいえるエンジニアのリストラが相次いでいるというソニー。しかし、ソニーを退いた面々は枯れかかった本体をよそに、そのDNAをタンポポの種子のように飛ばし、根を張り、新たな生命を育んでいる。その逞しさの秘訣は何か。清武英利が追った
⇒【前回】日本家電業界の歪みを象徴するソニーの「リストラ部屋」 https://nikkan-spa.jp/462580
ソニーを辞めた人々はどこへ行ったのだろうか。そのヒントがソニー通りの終点・五反田駅近くにある。
品田哲氏(55歳)。早期退職の道を選び、ソニーから流出したエンジニアの数はこの1年間で1600人に上るが、部長職だった彼も4月から「辞めソニー」の一員に加わった。ソニー退職後、最初に手掛けたことは、五反田駅近くのマンションの一室に、「TEKNI-S」という看板を掲げることだった。五反田駅周辺、あるいはその駅から出発したエンジニアが次々と起業に挑んでいるのだ。
大手人材派遣会社によると、会社を辞めて起業する人の割合は通常5%程度だが、ソニーの場合はその3倍の18%に上るという。
品田氏は、カーエレクトロニクス分野で100件以上の特許を取得し、3D技術開発にも携わった名物エンジニアである。彼の事務所には、昨秋退職した田中栄一氏(49歳)や岩出勝彦氏(48歳)ら「辞めソニー」のエンジニアが集まってくる。彼らが京都のベンチャー企業とともに手掛けるのは、スポーツタイプの電気自動車。手作りで一台800万円。購入予約を受け付け中だ。
⇒【写真】https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=464020
もう一つの目標が、「来るま」プロジェクト。車のオーナーがどこにいるかを判断し、車が自分で迎えに「来る」クルマの開発である。団塊世代が子供時代に夢見たアニメ「スーパージェッター」の「流星号」。ちょっと前なら、アメリカの特撮テレビドラマ『ナイトライダー』に登場した「ナイト2000」のようなドリームカーだ。
「AKB風に言うと、僕らは『SONY TMP』というところですかね」
品田氏に言わせると、TMPは生命力の強いタンポポの略。ソニーは枯れかかっているが、冠毛のついた種子は風に乗って飛散し、その地でソニーDNAを根付かせるというのである。
⇒【次回】「[ソニー離脱エンジニアたち]の逆襲」に続く https://nikkan-spa.jp/462582
【清武英利氏】
’50年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者、東京本社編集委員等を経て’04年、読売巨人軍球団代表。’11年11月球団代表を解かれた
― [ソニー離脱エンジニアたち]の逆襲【2】 ―
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