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TENGAの新商品はカップル向け!開発秘話を聞く 【荻上チキ×松本光一(株)典雅社長】 Vol.3

 8年前、『TENGA』をこの世に送り出し、日陰の行為とされてきた自慰行為に光を当てた株式会社典雅。社長・松本光一氏のものづくりに対する熱い思いは、荻上チキ著『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』(ちくま新書)に詳しいが、なんとこのたび、TENGAから新たな商品が発売されるという。同社からは、今年3月に女性向けの『iroha』が生まれたばかり。

 挑戦を続ける松本社長に、荻上が1年ぶりに再会。昨年、局所的に話題となった台湾のアダルトグッズへの寸評から新製品『VI-BO』の開発秘話まで、2人が熱く語り合った!

⇒「Vol.2 男性用オナホール先進国ニッポン」はコチラ
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◆Vol.3 TENGAの新作『VI-BO』―いつものエッチにプラスαの初体験

※前回、日本のオナホールについて熱く語り合った2人。今回はカップル向けの新作グッズ『VI-BO』について考察する

荻上:女性向けといえば、今年3月に『iroha』を発表したわけですが、今度また、新作が出るんですよね? コンセプトは、カップル向けとのことで。

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松本:遅くなってしまいましたが、ついにカップル向けのアイテムが出せるところまできました。

荻上:開発はいつくらいからスタートしたんですか?

松本:女性が使うものもカップルで使うものも、TENGAも、私の自主制作時代から作っていたんです。だから、構想としては8年以上になります。TENGAを発売してから多くのお客さんと接して、同時に僕の知識もどんどん増えてきて、カップル向けのグッズのあり方とか、男女間に存在するグッズの在り方について、自分の中で考えがどんどん変わってきたんです。過去に自分が作ったそういった試作品は、正しくないという結論に至ったんです。一部、継承すべきところはあるけれども、ほぼボツにして、新たに作っていきました。

 そして、女性による女性のためのものとして生まれたのが、『iroha』で、TENGAブランドからのカップル向けに生まれたのが、この『VI-BO』です。

荻上:そのボツにしたコンセプトっていうのはどういう方向を目指していたんでしょうか?

松本:当時、「こういったものがあったらいいな」っていうアイデアに基づいて僕が作っていった試作品というのは、考え方として合ってるところもあったんだけれども、モノとしてはまったく違ったんですね。例えば、『iroha』は、女性が心地よく使えるものであるべきで、でも、昔、僕が作った試作品はあくまで僕の発想で、男性目線だった。女性の立場に立っていなかった。後ろめたさや罪悪感を抱くことなく、これなら持っててもいいなって、女性が自分の壁というか、ハードルをあまり感じなくて、自然に使えるものであるべきだと。だから、女性が開発した、女性による女性の為のプロダクトであるべきだよね、っていう発想でプロジェクトは進み、結果、女性に対して受け入れやすいものになったと思います。

 この『VI-BO』は、その『iroha』ともまったくコンセプトが違っています。先ほども言いましたが、これまでのこの手のグッズは、どうしても男性が女性を責めるものが主流で、「男性が使ってみたい」というのがスタートです。僕が約10年前に模索したものは決して、そういうコンセプトではなかったけれど、それでもやはりその傾向はあるので、それはもう否定しようと。自分で自分を否定したわけです。

「男女の間においてグッズとは、どうあるべきか?」を出発点に考えると、男性が一方的に男性の意思で、ある種、妄想的に責めるのではなくて、カップルの楽しいコミュニケーションというところに第一歩がある。

 ローションやグッズの普及率を調査をしたら、その数字はまだそれほど高いモノではありませんでした。でも、「ちょっと使ってみたい」と思っている男性は結構いると思うんでね。女性側も、「彼が望むならいいよ」って思う人は多いでしょうし、興味もあると思うんです。ただやはり、きっかけは男性が作るケースが多い。『iroha』の開発時に行った女性向けの調査でも、「グッズを知ったきっかけはパートナーから」という回答が半数以上ありました。

 つまり、多くの男性が、「試してはみたいけど、もしこういうバイブを見せたら彼女、ひいちゃうかなあ」といった気持ちを持ってるのではないかと。ものの在り方としては、男性の「使ってみたい」という気持ちを満たし、「これならばいいかもしれない」と思えて、同時に女性がひかない感じ。

『iroha』は、女性社員たちが作った、女性による女性のためのアイテムですが、『VI-BO』の最初の窓口は男性だし男性がメインに使うもの。だから、TENGAブランドになっています。けれども、女のコも「これなら使ってもいいかな」と思えるもので、カップルが楽しくコミュニケーションのひとつとして使えるくらいライトなもの、というのがコンセプトです。

荻上:『iroha』同様、見た目はポップですね。カップルがローターとか今まで使ったことなくても、「ちょっとこんなのあるんだよね」って男が言いやすいもの。「これ知ってる?」みたいな感じで出せるくらいの。ベースとなるボールに様々な形のカバーを付けて、震動の力を利用して場面に応じて使い分ける。カラーも豊富で……まるで「式神」みたいだ。「夜の式神」(笑)。

松本:いつものエッチにプラスαの初体験みたいな感じでしょうか。男性がパートナーにアダルトグッズを提案するって、すごく卑猥なイメージがあったと思うんですけど、それを崩したいんですよね。ローションを使うと、ローションを使わないセックスよりも幅が広がって、女性にも負担が減って、というのと同じで、楽しく軽く、こういったものを導入して、2人のセックスが普段とは違うより楽しいものになればいいなって思います。2人が楽しく使うっていうものに、新しく提案したい。そういうものとして世の中に生まれたいと思います。カテゴリーとして、男性がぐいぐい使うってものじゃないです。

荻上:何回イカせられるかとか、何時間セックスできるかとか。そこに挑戦し出した段階で、マンネリの証になっちゃいますからねぇ。

松本:女性に受け入れてもらうことで、結果的にいいセックスになると思うんです。男性からの一方的なものではなく、女性が「2人で楽しく、かわいいものを使うんだ」っていう気持ちで受け入れてくれるほうが結果的にいいと思うんですよね。

荻上:これもやはり、開発時の使用実験はしたんですか?「TENGA」の場合は、社長自ら毎日「テイスティング」していましたけれど、これは一人だと、回数は試しにくいですよね。

松本光一(株)典雅社長

松本光一(株)典雅社長

松本:相手が必要ですからね。TENGAのテイスティングのように自分の意思だけではできないところがありますが、もちろん社員が自分のパートナーと試してみたりとか、一般の方にモニターしていただいたり。

 実際はこういうのをもっと早くやりたくて、構想はすごくたくさんあったんだけど、男性用に必死に取り組んできたのでなかなか形にできなくて時間がかかってしまった。でも、その間も我々もいろいろと知識や技術が更新されていって、TENGAがやるべきことは何なんだっていう、その一つの答えが『VI-BO』です。カップルが明るく楽しく使える、新しいバイブ。今度はお客さんから、パートナーと使ってこうだったとか、パートナーにこんなふうにしてもらったとか、皆さんからの感想をきくのが楽しみですね。

荻上:使い方のバリエーションがその人のアイデア次第で変わるプロダクトなんですね。

●株式会社 典雅 http://www.tenga.co.jp/
●iroha http://iroha-tenga.com/
●VI-BOhttp://www.tenga.co.jp/products/vibrator/index.php

【松本光一】
1967年、静岡県出身。自動車整備の専門学校を卒業後、スーパーカーやクラシックカーの整備に携わる。その後、中古車販売会社に勤めるも、モノづくりへの思いが日々強まり、34歳で脱サラ。当時、粗悪なのが当たり前、マーケティングどころかメーカーの連絡先明記すらないアダルトグッズを変えようと、それまでに貯めた軍資金1000万円を元手に、自主制作を始める。「アダルトグッズに一般性を」と取り組むこと3年、試行錯誤の末、軍資金も底をつき始めた2005年3月に有限会社典雅を立ち上げる。同年7月7日、モノづくりの魂を込めた「TENGA」5種類を同時発売。発売から1年で、シリーズ累計出荷数は100万本を突破する大ヒットとなる。

【荻上チキ】
1981年生まれ。評論家・編集者。メールマガジン『αSYNODOS』、『困ってるズ』、ニュースサイト「Synodos」編集長。政治経済から社会問題まで幅広いジャンルで取材・評論活動を行う。週刊SPA!にてエコノミスト・飯田泰之とともに「週刊チキーーダ!」を連載中。最新刊は、飯田泰之との共著、『夜の経済学』(扶桑社)。他、著書に『彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力』(扶桑社)『検証 東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)『セックスメディア30年史』(ちくま新書)『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬舎新書)など。出演番組にTBSラジオ「session-22」、CS朝日ニュースター「ニュースの深層」ほか。

<撮影/落合星文 構成/鈴木靖子>

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