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アダルトグッズの認識を変える 【荻上チキ×松本光一(株)典雅社長】 Vol.4

 8年前、『TENGA』をこの世に送り出し、日陰の行為とされてきた自慰行為に光を当てた株式会社典雅。社長・松本光一氏のものづくりに対する熱い思いは、荻上チキ著『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』(ちくま新書)に詳しいが、なんとこのたび、TENGAから新たな商品が発売されるという。同社からは、今年3月に女性向けの『iroha』が生まれたばかり。

 挑戦を続ける松本社長に、荻上が1年ぶりに再会。昨年、局所的に話題となった台湾のアダルトグッズへの寸評から新製品『VI-BO』の開発秘話まで、2人が熱く語り合った!

⇒「Vol.3 TENGAの新商品はカップル向け!開発秘話を聞く」はコチラ
http://nikkan-spa.jp/510059


◆Vol.4 アダルトグッズの認識を変える

※前回に引き続き、カップル向けの新作グッズ『VI-BO』について考察する

荻上チキ荻上:これで制作をする過程でも、サイズをどこまで大きくする小さくするとか、かなり苦心されたんじゃないですか。この2年間最初から作ってきて、こう改良してきたっていう歩みってありますか?

松本:硬さと、サイズと質感、いずれも結構、厳しい設計でしたね。まず、それぞれに入っている30mm径のベースボールですね。最初の試作品は振動がもっと弱かったんです。このサイズの中でどこまで強くできるかを突き詰め、結局、電池が3つになって、モーターをぎりぎりまで大きくする改良をしています。

荻上:サイズの割に、振動の力が強いですね。カバーの素材は?

松本:これは新開発のエラストマー製になります。既存のバイブで、すごくべたべたした素材のものがあると思うんですけど、かといってシリコンでこの成型をやるとコストがかかりすぎてしまう。手に取りやすい価格で、手軽に楽しんでもらえる商品にしたかったので、我々が使い慣れている材料を新たに改良して、より質感のいいものにしようという方向で考えていきました。TENGAやエッグに使っている材料とベースは近いんですが、ある技術を加えて、表層のベタベタを抑えています。多分、他では見たことはない素材じゃないでしょうか。硬さも何種類かの中から決めていきました。硬すぎても軟らかすぎても問題ですからね、

 大きい人、太い人、細い人いっぱいいますので、社員に試してもらいながら輪の部分を薄くしたり、径を変えたり。実際に形がどうかっていうのは女性にも実際に試してもらったり。すべてそういう経過を経ています。

VI-BO荻上:これは丸洗いOKなんですか?

松本:もちろんです。

荻上:電池は交換式なんですよね。

松本:交換式です。交換できるように作りました。『VI-BO』っていう名は「バイブレーション・ボール」の意味で、共通するベースボールに、機能を持ったアウターカバーをつけることで、それぞれの機能が生まれてくるという考えです。だからただ単に5つのバイブが出ましたよっていうものではないんです。例えば、これは指につけるタイプなんですよ。

松本光一(株)典雅社長荻上:ローターの機能を身体に装着できるアイテムですね。「フィンガーボール」は指輪型なんですか。よくマッサージ屋モノのAVで、手に大きい振動装置をつけている人いるじゃないですか。でけえなと思いつつ、使ってみたい人はいたんじゃないかな。『ワンピース』の同人誌だと、触れるだけでイカせられる悪魔の実の能力をつけたキャラが描かれたりしますけど(笑)。

松本:このブルーのは「リングボール」――ペニスリングなんですけれども、既存のものはパワーが弱いものも多いんですが、これはパワフルですよ。

荻上:ピストンしながら、クリにあてたりするわけですね。FF(ファイナルファンタジー)とかで新たな装備を手に入れたようだ(笑)。しかも武器じゃなくて、アビリティのあるアクセサリーをもらった感じ。

VI-BO

VI-BO リングボール

松本:そうなんですよ。これは使ってくださる人がいろんな使い方を思いついて、こうして使うとか、ああして使うとかなると面白いなと。それと付け替えるっていうのがミニ四駆的というか、そういう面白さがあると思っていて、例えば今後の展開で確定じゃないんですが、これのもっと強力なタイプ、強化モーターを出すとか、このカバーをお客さんの要望から開発していくとか、お客さんともやりとりしながら楽しくやっていきたいなあと思っています。

荻上:女子からもいろいろ試せるかもしれませんね。アナルパールとか、震動フェラとか、乳首いじりとか。せっかくカップル向けなのだし。

松本:お客さんとコミュニケーションをしながら、そういう風にみんなのアイデアでカバーを増やせたら楽しいですよね。。玩具的なんだけど玩具すぎない、どちらかというと男寄りではあるんだけど、女性はひかないっていうバランス。アダルトグッズにある「男性が女性を責めるもの」という認識を、根底から、「カップルで楽しく使うもの」っていうものに変えていきたい。実はこれ、まだ誰もなしえていないことですから。

荻上:とりあえず、発売したら一個ください(笑)。しかし、やはり「ものづくり」には、長い時間がかかりますね。8年間ですからね。

松本:それだけ愛情を注がないと市場は作れませんからね。他にもたくさんアイデアはありますが、一歩ずつしか進めない。だからこそ、ちゃんとしなくてはいけませんね。

『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』(ちくま新書)
TENGA開発までの道のり、松本社長のモノづくりへのこだわりも紹介。

『夜の経済学』(扶桑社)
荻上の最新共著『夜の経済学』(扶桑社)には、iroha開発秘話も収録。

●株式会社 典雅 http://www.tenga.co.jp/
●iroha http://iroha-tenga.com/

【松本光一】
1967年、静岡県出身。自動車整備の専門学校を卒業後、スーパーカーやクラシックカーの整備に携わる。その後、中古車販売会社に勤めるも、モノづくりへの思いが日々強まり、34歳で脱サラ。当時、粗悪なのが当たり前、マーケティングどころかメーカーの連絡先明記すらないアダルトグッズを変えようと、それまでに貯めた軍資金1000万円を元手に、自主制作を始める。「アダルトグッズに一般性を」と取り組むこと3年、試行錯誤の末、軍資金も底をつき始めた2005年3月に有限会社典雅を立ち上げる。同年7月7日、モノづくりの魂を込めた「TENGA」5種類を同時発売。発売から1年で、シリーズ累計出荷数は100万本を突破する大ヒットとなる。

【荻上チキ】
1981年生まれ。評論家・編集者。メールマガジン『αSYNODOS』、『困ってるズ』、ニュースサイト「Synodos」編集長。政治経済から社会問題まで幅広いジャンルで取材・評論活動を行う。週刊SPA!にてエコノミスト・飯田泰之とともに「週刊チキーーダ!」を連載中。最新刊は、飯田泰之との共著、『夜の経済学』(扶桑社)。他、著書に『彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力』(扶桑社)『検証 東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)『セックスメディア30年史』(ちくま新書)『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬舎新書)など。出演番組にTBSラジオ「session-22」、CS朝日ニュースター「ニュースの深層」ほか。

<撮影/落合星文 構成/鈴木靖子>

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