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巨人の胴上げを阻止した“新星マニキュア捕手”

 野球中継を見る際は、キャッチャーに注目すると面白い。

 キャッチャーが器用に指を動かすハンドサインは、各球団、各捕手によってそれぞれだが、プロの世界では一般的には、ランナーがいない場面では至ってシンプルだ。しかしランナーを背負った場面では、相手走者にサインを読まれるのを防ぐため、バッテリー間のサインは複雑となる。

 特にランナー2塁の場面では、2塁走者からサインが丸見えとなるため、最初に「3」を出したら3つ目がサインとか、1死なら1つ目、2死なら2つ目と、アウトカウントに応じてサインが変わったり。プロのサインは、出す方も覚える方も大変だ。野球の起点は、キャッチャーの頭脳と共に、球種を伝える指先とも言える。

田中大輔

18日の試合では巨人の寝首をこの”ツメ”で引っ掻いた。スタメンマスクで今季初安打、そして猛打賞。お立ち台も初体験だった

 その指先に、一風変わった工夫をほどこしたキャッチャーが現れた。彼の名は、田中大輔(28歳)。中日ドラゴンズ7年目の捕手だ。

 日本暮らしの長い外国人が、最初に覚える苗字ナンバーワンと言われる「田中」に加え、これまたよくある「大輔」という組み合わせがたたってか(失礼!)、彼の存在が中央球界に知られることは、これまでほとんどなかった。

 プロ7年目を迎えた今季の田中は、ポスト谷繁として開幕こそ1軍で迎えたものの、序盤から苦戦続きのドラゴンズでは出番らしい出番もなく、すぐに2軍降格。3日前に一軍再昇格を果たしたばかりだった。

「キャッチャーとしては心理的に、どうしても早く打者を追い込みたいけど、焦らず、平行カウントに整えてから勝負するよう心掛けた」丁寧なリードで、今季2試合目のスタメン出場を果たした田中は、18日の巨人戦で、リーグ優勝にリーチを掛けたい重量打線を4安打2失点に抑える好リード。本拠地ナゴヤドームでの屈辱の胴上げを阻止する値千金の働きを見せた。

 田中はバッティングでも「今季初安打」「プロ初の3安打」「同点犠飛」の固め打ち。仕上げは3−2で迎えた9回の守りで、岩瀬の日本記録達成の瞬間、正捕手の谷繁を差し置いてバッテリーを組んだのだ。

「岩瀬さんとは、オープン戦以来のコンビだった」という田中は、9回先頭の高橋由伸を歩かせ、同点のランナーを出塁させても慌てなかった。百戦錬磨の岩瀬には何度も首を振られながらサインを出し続け、最後は坂本、寺内を連続三振で締めた。岩瀬の382セーブの日本記録達成の瞬間を受け止めたのは、田中のミットだった。

田中大輔

白の修正液に黄色の蛍光色を配合するあたりが田中の”イキな”気遣い

 田中の指は「サイン交換の時、ピッチャーに少しでも見えやすいように」という気配りで、サインを送る右手の5本の爪は蛍光色に塗られていた。

⇒【写真】「右手のアップ」はコチラ
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=510205


 ナゴヤドームや京セラドームは、投手によって「サインが見にくい」とされる球場だ。また周囲が暗いナイターと比較すると、集中力が欠如しやすいとされるデーゲームでは、サインの見落としやサイン違いが多発するという面白い統計が、メジャーで発表されたこともあった。

 それらを改善するために、白のマニキュアを塗ったり、爪にテーピングを貼っている捕手は時々見かけるが、蛍光色をミックスした田中の指先には我々もビックリだった。

 この秋、日刊SPA!が自信を持って推薦する(しかもまあまあイケメン?)田中大輔の指先に、今後も注目だっ!

<取材・文/スポーツカルチャー研究所 撮影/渡辺秀之>
http://www.facebook.com/SportsCultureLab
海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当

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