更新日:2016年01月18日 20:09
スポーツ

なでしこジャパン主将・宮間の切なる叫び「結果を残し続けなければ、皆さんが離れていってしまう」 【帰国会見全文】

なでしこジャパン宮間あや主将

帰国記者会見に臨んだ、なでしこジャパン宮間あや主将

 なでしこジャパンが国民的人気を得る、ほんの少し前。国際大会では初となるメダルを賭けた、’08年の北京五輪の3位決定戦を思い出す。降り止まぬ小雨の中、強敵ドイツを相手に高さもスピードも及ばず、なでしこが0対2で完敗を喫した試合後のことだ。  ぬかるむピッチ条件の中、この試合もフル出場した宮間あやは、ゲーム後、ただ一人、ピッチに戻るとライン際に無造作に散らかっていた給水用のボトルを拾い上げていた。うちひしがれるイレブンを尻目に、時折スタンドの応援にも視線をくれた上向きの眼差しは、ほどなく彼女たちの努力で手にする、なでしこの栄光を暗示しているようだった。  あれから7年の歳月が経った。当時、未来の司令塔候補と呼ばれていた宮間は、なでしこジャパンの主将としてワールドカップ準優勝を手にして帰国会見のひな壇に上がった。 ◆「女子サッカーが文化になっていけば」 宮間:これまでチームを支えてくださった関係者の方々、そして一番はサポーターの皆さまにチームを代表して御礼を申し上げます。ありがとうございました。結果は準優勝という、自分たちが目標としていたものに一歩届きませんでしたが、出来る限りのことは、チーム全員でできたと思っています。チームは一旦バラバラになり、それぞれの場所での活動になりますが、女子サッカー発展のために、女子サッカー選手として頑張っていきたいと思っております。 ――改めてこの準優勝は、なでしこにおいてどのような価値ですか。ご自身は試合後は「やり切った。悔いはない」とおっしゃっていましたが、少し時間が経って「もう少しああいうことが出来たなあ……」という感情は、芽生えてきてますか? 宮間:そうですね。試合を見返して……でも、その時にできる最良の判断だったり、最良のプレーを、チーム全員でしたと思うので、そういった意味での後悔はありません。とにかく最後までチーム全員でやり切ったと思います。 ――決勝前日、なでしこを「ブームではなく文化にしたい」という印象的なコメントをくれました。今日は7月7日、七夕です。将来のなでしこに向けて、どんな願いを短冊に書きたいですか? 宮間:(あいにくの小雨で)あまり天気が良くないですけど(笑)、いまサッカーを始めようとしている少女たちだったり、頑張っている選手たちが、きちんと「サッカーを最後まで頑張れた」と言えるような環境であったり、私たち(なでしこの選手たち)を目標に頑張ろうと思ってくれる選手たちが、最後までサッカーができるように、女子サッカーが文化になっていけばいいなと思っています。 ◆「代わりになるものは、何もない」 ――連覇こそ逃したものの代わりに得られたこと、感じたことがあれば教えてください。 宮間:一番欲しかったワールドカップを手にすることができなかったので、代わりになるものは、何もないと思います。 ――今大会をひと言で表現すると、どういった言葉に集約できますか?
同時に会見に臨んだ佐々木則夫監督

同時に会見に臨んだ佐々木則夫監督(右)

宮間:(笑顔で監督を見ながら)ひと言ですよね……。結果こそ一歩届きませんでしたが、目標や、仲間を信じる力が、すごく強かった。それをすごく強く感じた大会でした。 ――なでしこの仲間にとって、宮間選手はどんな存在だったと自分では思いますか? 宮間:(はにかみながら)分からないです。聞いてみてください。 ――少し気が早いかと思いますが、リオ五輪に向けた戦いが始まったと思います。リオ五輪に向けてご自身はどうやって関わっていきたいですか? 宮間:これまで通り、選手として、日々を大切に頑張っていきたいと思います。 ――女子サッカーを「ブームではなく文化に」とおっしゃっていました。これだけ多くの人に浸透していれば、すでに文化になっている気がしますが、どのように実感を持たれていますか? もし、まだ違うとおっしゃるのであれば、宮間さん自身はどういうことをすれば、どんな形になるんでしょうか? 宮間:ひとりでも多くの方にそう言っていただければ、とても嬉しいな、と思うのと同時に、とはいえ2011年ワールドカップに優勝して以降、たくさんの方に興味や関心をもっていただいて、注目していただきながらも、日本国内の女子リーグでは、なかなか観客が増えない、また減ってしまっている状況もあります。大きな大会がある度に注目していただいている風には感じますが、私たち(代表選手)自身は、結果を残し続けなければ、皆さんがすぐに離れていってしまうのではないか、という不安を、選手としては抱えながら戦っています。なので、そういった不安を感じなくなったら、きっと、文化になったと言えるんじゃないかな、と思います。 ――リオ五輪で「再び世界一」に立つために、今後さらに伸ばしていく必要のあるところはどこでしょうか? 佐々木監督 まだリオ五輪の切符を手にした訳ではありません。アジアでの二枠を競う戦いはプレッシャーのかかる厳しい戦いです。そんな中でも「個の質」を高めていくことと、「個の判断」。特に「個の質」をもっともっと高めていかないと。 宮間:監督が言われたように「個の質」も必要だと思います。それに加えて自分は、そこ(個の質)が上がれば、常に自信を持って試合に臨むこと。私たちは常に世界一、ナンバー2ときちんと戦えるんだ、またはナンバーワンを狙えるんだ、という自信をもつことだと思います。 ――2011年のワールドカップ優勝など、五輪を含めた3大会連続の決勝進出で、女子サッカーの環境面、サポート体制は大きく改善されたと思います。この先の未来に向けて、ここが足らなかったこと、環境面のサポート体制などを教えてください。 宮間:日々、夢中になってボールばかり追いかけているので、そういったことを広い視野で考えることは難しいですが、なでしこジャパンの今回のことに関して言えば、数は少なくとも、充実した合宿や大会に挑ませていただいたこと。そこは、私たちは意識を高く持って、少ない数日ですが大事に過ごすことができたと思っています。足りなかったことは、それとは裏腹に、もう少し一緒に過ごす時間だったり、試合をこなせていたら、また違った経験ができて、また新たな力になっていたかな、とは思います。(以上)  7月12日(日)、なでしこリーグは再開する。宮間が未来の女子サッカーに希望を描けるように、今週末はなでしこリーグの試合観戦に出かけてみよう! ●なでしこリーグ nadeshikoleague.jp 取材・文/小島克典(スポカルラボ) 撮影/遠藤修哉(本誌)
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