雑学

若き研究者がクマムシを「ゆるキャラ化」した理由

クマムシ博士

堀川大樹氏は78年、東京都生まれの地球環境科学博士

 摂氏150℃から絶対零度の中にいても、人間の致死量の1000倍の放射線を浴びても、はたまた宇宙空間に直接さらされても生存できる「地球最強の生物」クマムシ。その超生物的特性が宇宙生物学の解明や医療技術に応用できる可能性があるとして脚光を浴びている。

 現在、パリ第五大学フランス国立医学研究機構に所属している堀川大樹氏は、NASAでの研究経験も持つクマムシ研究の若きパイオニア。だが、その堅苦しそうな経歴から受けるイメージとは異なり、メルマガやブログでクマムシ普及に努め、自身が考案したゆるキャラ「クマムシさん」が英語圏と中国語圏でも人気を博すなど、ポップなクマムシ広報活動も展開している。

 写真で被っているクマムシの帽子は特注だそうだが、クマムシさんのぬいぐるみやストラップなども、自分で描いたイラストを元に製品化し、ネットショップや大手書店に置いてもらっているのだとか。研究者である彼がビジネスに乗り出したのには、研究者をめぐる厳しい経済状況が背景にあるそうだ。

「自分自身も経験したことですが、ポスドク問題の現実は非常に厳しい。1人の募集につき数十~100人の応募がある世界ですから。自分もこの先、どうなるかわからない。だったら、研究費を少しでも自力で稼げないかと始めたんです」

 そもそも研究者が非常に少ないというクマムシ研究の世界。その世界で生きるということについては「生物としての常識をことごとく破って生き延びているクマムシのように、マイウェイを貫いたら居場所は見つかるものですよ」と語る堀川氏。だが、こういったゆるキャラビジネスは前例がないぶん、日本の研究者からの風当たりも強いのでは?

「『ビジネスをやると研究結果を歪める方向にバイアスが働く』などと言われることは多々あります。確かに研究者は論文を書いて評価されることで次の就職先が決まりますが、逆に他のビジネスをして生活費が工面できればもっとじっくり自分の研究に取り組めますよね。でも大多数の人は批判を恐れて実行に移せていない。海外を知ると、こういう同調圧力は敏感に感じますね」

 しかし、「特に自然科学では専門的な内容を一般化して伝える手法がやり尽くされることはないと思う」という堀川氏。誰もやったことがないことへのチャレンジは、本業のクマムシ研究と同じく得意分野のようだ。

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<本誌構成/川口友万 安英玉(本誌) 撮影/山川修一(本誌) 再構成/SPA!編集部>

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