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なぜ多い? 胃袋を刺激する[マンガ・アニメ]の名作

孤独のグルメ』、『深夜食堂』、『花のズボラ飯』、『きのう何食べた?』、『いつかティファニーで朝食を』……食がテーマになっていたり、食事のシーンが描かれているマンガやアニメの名作が多数生まれ、読むひとの胃袋を刺激している。例えば『孤独のグルメ』は実写ドラマ化され、深夜に放送されることで「夜食テロ」なんていう言葉も広まった(『孤独のグルメ』が先か、「夜食テロ」が先かは定かではないが)。
第1回「コンテンツ・アワード・ジャパン・フード・カルチャー」

受賞者と審査委員の記念撮影

「和食」が無形文化遺産に登録決定するなど、日本食や食文化が世界で注目を浴びるなか、第1回「コンテンツ・アワード・ジャパン・フード・カルチャー」(農林水産省主催)の表彰式が12月8日に開催され、大賞は『銀の匙 Silver Spoon』が選ばれた。 「コンテンツ~」は、マンガやアニメを通して日本食・食文化のすばらしさを世界中の人々に発信していくことが目的で、文化性・独自性・新規性・物語性・普及性の観点から審査を行い、第1回は約250作品(!)のなかから金賞・銀賞・銅賞を選出。  しかしなぜこうも胃袋を刺激する名作が多いのか?  審査委員長の妹尾堅一郎氏は、「日本には素晴らしい農林水産関連の漫画があり、それが生まれる土壌がある。そもそも日本食自体が多様であるため、実に多様なジャンルの漫画がある。漫画の物語性としても、職人の根性ものから料理のうんちくまで様々。これは日本の食文化が極めて豊かである証。その反映として漫画がある」と言う。  さらに日刊SPA!では、マンガ部門で銅賞を獲得した『深夜食堂』(安倍夜郎著『ビッグコミックオリジナル』で連載中)に注目。  同作は、とある飲み屋街の片隅にあり、営業時間は深夜0時から朝の7時までという小さなめしや、人呼んで「深夜食堂」を舞台にしたマンガ。メニューは「豚汁定食」「ビール」「酒」「焼酎」しかないが、材料さえあれば、マスターができるものなら何でもつくってくれる。このふんわりとした空間で、夜ごとマスターとひとくせもふたくせもある客たちが織りなす人間模様が描かれている。サラリーマンをはじめ、同業者や女性からのファンが多いのも特長だ。 「決して大げさな話じゃないんです。だけどそれがかえってじんわり来る。僕たちがカウンター越しに眺めている人間ドラマそのもの。例えばですけど、お客さんと別のお客さんのことを『しばらく顔見ないねぇ、元気にしているかな』なんて話をしているとそのお客さんが現れる、なんて思わず『あるある!』と言いたくなるような(笑)。作者も本当にお酒と酒場の雰囲気が好きなんだろうなっていうのが伝わります」(新宿歌舞伎町のバー・マスター) 「マスターが作る料理が本当に美味しそうで。どれもいたってシンプルな食材と調理法なんでマネして家で作ることもあります。でも、あの食堂で食べられたらより美味しいんだろうなと思います。自分にとっての深夜食堂を探したくなります」(会社員の女性)  同作は’09年、‘11年に小林薫主演でドラマ化。さらに海を渡って韓国では、マンガ・ドラマともに人気を博し、日本を舞台にしたままでミュージカルも上演されるほど。 「原作がそのまま愛されるというのは珍しい」(韓国マニアの男性)そうで、「マニアはわざわざ日本語版のマンガを購入します。僕は逆に韓国語版をお土産に買って帰りましたが(笑)」  作者の安倍氏は、元サラリーマンで、20年勤めた広告代理店を退職し、’04年に41歳で漫画家デビューという遅咲き型。だからこそサラリーマンの悲喜こもごもをリアルに描き出し、またそれを温かく包み込むような視線が作品から感じ取れるのかもしれない。  しかし、堅苦しいことはぬきにして、一杯やりたくなる一冊だ。 受賞作品は、以下のとおり。 [大賞] 『銀の匙 Silver Spoon』荒川弘/小学館 週刊少年サンデー [マンガ部門 金賞] 『もやしもん』石川雅之/講談社 モーニング [マンガ部門 銀賞] 『夏子の酒』尾瀬あきら/講談社 モーニング [マンガ部門 銅賞] 『深夜食堂』安倍夜郎/小学館 ビッグコミックオリジナル [マンガ部門 審査委員特別賞] 『美味しんぼ』雁屋哲・花咲アキラ/小学館 ビッグコミックスピリッツ [アニメ部門 金賞] 『それいけ!アンパンマン』やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV [アニメ部門 銀賞] 『映画クレヨンしんちゃん ばかうまっ!B級グルメサバイバル!!』臼井儀人/双葉社・シンエイ動画・テレビ朝日・ADK [アニメ部門 銅賞] 該当作品なし <取材・文/おはつ>
深夜食堂1

あなたの腹と心の満たし処

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