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新コミッショナーへ提案!12球団対抗“映画祭”はいかがですか?

「ダグアウトって何ですか?」

 こう語るのは 、野球はおろかスポーツに一切の関心を示さない女性記者Aさん。これまで政治、経済、社会といった、スポーツとは距離のある分野を担当してきた。彼女は常々「アカの他人がプレーするのを見て、何がそんなに面白いのか理解できない!」と言い切る。

「ダグアウトの向こう2013」

ダグアウトからはこんな光景が(「ダグアウトの向こう2013」より)

 そんなAさんと劇場で「ダグアウトの向こう 2013」を鑑賞した。すると彼女が実に面白い観方をしていたことがわかった。残念ながらAさんは、プレーにも野球にも、面白さは見出せなかったと言う。しかし人間、友情、リーダー、組織といった誰にでも共感できるフィルターを通して、いろんな感銘を受けたと語ってくれた。

 横浜DeNAベイスターズが製作した公式ドキュメンタリー映像「ダグアウトの向こう 2013」(過去記事はこちら⇒http://nikkan-spa.jp/551415)は、タイトルが示す通り、今季のダグアウトの向こうにある選手たちの素顔をも映し出した、ファンにはたまらない映像が満載のドキュメンタリーだ。フィールド上の晴れやかな表舞台に加え、その裏側で何が起きていたかを露わにした、今季のベイスターズの究極のダイジェスト映像集とも言える。

 劇場に入る前、Aさんにダグアウトの説明をした。「ダグアウトとは試合の時、プレーをしていない選手たちが座っているところです。ベンチとも呼ばれています」。Aさんは軽く頷くと、そのままの涼しい顔で劇場内へと足を踏み入れた。

 上映が始まって20分ほど経った頃だったろうか。おもむろにAさんがメモ帳を取り出した。そして暗闇の中、上映が終わるまで、サラサラと何かを書き記し続けた。後でそのことを尋ねると、思うことが多々あったので書き留めたのだという。

 彼女は一体、何を思ったのか?

「小池(正晃)の引退試合のシーン。同期の後藤(武敏)との友情。あれは泣けますね」。

 クールな表情とは裏腹にアツいコメントが飛び出した。続けて、「ベテラン捕手の鶴岡(一成)が、あんな風に若手に発破かけているのは、すごく良いですね。厳しいけれど、とびきり親身で熱い。あれなら若手も向上心が刺激されるはず」と絶賛した。

 ついには「でも、何といってもキヨシですね」と監督の中畑清をキヨシ呼ばわり! 「リーダーたるもの、ああやって公の場である『外』も、チーム内という『中』も、きちんと話すことができて、かつ明るいというのは素晴らしい」とすっかり魅了された様子だった。

 上映後は、まるで今季のベイスターズを見守ってきたファンのように語ったAさん。とはいえ、無論90分では野球はおろかベイスターズを理解などできるはずもない。実際のところAさんは、内容についていくのに精一杯だったという。次々と登場するベイスターズの選手たちは殆どが初見だ。そのため彼女は暗闇の中で忘れないよう、選手の名前を紐付けながらメモを取ったと明かす。

 はっきり言って本作はベイスターズファンでない限り「見たい」とは思わないだろう。なぜなら、他球団のファンにとっての本作は、他人の旅行アルバムや、子どもの写った年賀状のようなものだからである。それらは写っている人に思い入れがあるほど惹きつけられるもの。だが被写体に思い入れがなくとも、視点を変えれば、惹きつけられる要素が多いことに気付く。例えば、歴史ある建物や雄大な景色、子どもの輝く笑顔などが、多くの人の心に響くように。

 Aさんが惹きつけられたシーンの数々は、ファンでなくとも心に響く画だった。横浜高校時代からチームメイトだった小池と後藤の友情の歴史は、きっと誰が見ても美しい。鶴岡の叱咤激励は見る者に刺激を与え、中畑監督のリーダーシップは、学校や会社など組織を束ねる人の姿と重ねることができる。

 Aさんはまた、普段は見ることのできないダグアウトの向こうの映像について、並々ならぬ関心を示す。「大の大人たちが、チームメイトのプレーにあんな風に一喜一憂しているとは知りませんでした。子どもみたいに眩くて、圧倒されますね」。本作の訴えるものをしっかりと心に止めたように言う。

「私はいわゆる文科系で、体育会系とは無縁だったので、あんな風に一致団結するのは羨ましいなって思いました」。スポーツの面白さをどこかで理解し始めているのかもしれない。

 鑑賞後も、相変わらずスポーツに興味はないと断言したAさんだが、「12球団すべてで様々なドラマがあったはずです。他球団のも観てみたいですね」とのたまった(!)。どうやら彼女はスポーツとしてではなく、人間ドラマとしての「ダグアウトの向こう」を知りたいと思ったらしい。

 プレーの裏で起きているドラマは、誰あろう各球団のファンが観たいと思うコンテンツだ。ベイスターズではファンの心を見事に捉え、同企画は2年連続で実現したという。他の球団でも検討してみてはいかがだろうか? ちなみにスポーツ無関心のAさんは、「他球団バージョンが上映されたら、全て観に行きたい」と断言している。

熊崎勝彦氏

新コミッショナーに就任した熊崎勝彦氏。東京地検特捜部長、最高検察庁公安部長などを歴任。現在は退官し、弁護士として日本野球機構(NPB)のコミッショナー顧問を務めていた

 折しも暮れも差し迫った26日、NPBには第13代の新コミッショナーに熊崎勝彦氏(71)が就任した。熊崎氏は、弁護士であり、NPBのコミッショナー顧問として9年間従事してきた。野球界の現状を把握したやり手の適任者と期待される。

 就任会見で「組織の整備と強化、事業をどのように拡充させるかといったことを、スピード感を持って進めていく」と抱負を語った熊崎新コミッショナー様。ファン層の強化と拡充を目指して、12球団対抗の「ダグアウトの向こう側コンテスト」なんていかがですか?

<取材・文/スポーツカルチャー研究所>
http://www.facebook.com/SportsCultureLab
海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当。

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