【電王戦リベンジマッチ観戦記2】リベンジ達成!? そして「第3回」へ…
―[電王戦リベンジ]―
2013年12月31日の大晦日。東京・原宿のニコニコ本社にて、将棋のプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが対決する『電王戦リベンジマッチ』が開催され、ニコニコ生放送にて生中継された。
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対局後の感想によれば、この38手目△5六銀は、船江五段の完全な想定外というわけではなかったが、意外な展開ではあったようだ。実はこの前にツツカナが指した前局と同じ30手目△7五歩が、練習ではツツカナが1回も指して来なかった手だったという。前局では37手目までは経験済みの局面だったので、△5六銀は当時あるかもと考えたことはあるという程度だったようだ。
この38手目△5六銀は、銀と歩を交換して攻め込む手なので、ツツカナ側が先に大きな駒損となる。いわゆる「無理攻め」気味で、よほどの勝算がなければ人間的には指しづらい一手だが、コンピュータ将棋ソフトは攻めると評価値が上がりやすい傾向があり、こうした手を選択しがちだ。
もしもこれが完全にはじめての局面ならば、ツツカナだけには何か先で駒損を回復できる攻めが見えているのかというプレッシャーがかかるが、この日の船江五段にとっては、まったく考えたこともない局面というわけではない。さらに今回は、船江五段が勝負どころで考えるための時間をたっぷり残している。前局とくらべれば、心理的にはかなり条件はよいと言える。
しかし、お昼すぎ以降のプロ棋士たちの検討室では、おそらく大丈夫だろう(と思いたい)が、まだ難しいところがあって勝負はわからない、という時間が長く続いていた。駒損したツツカナは、とにかく猛然と攻めてくる。1手でもミスをしたり見落としがあれば即負けになる。船江五段はツツカナの攻めを受けながら反撃のチャンスをうかがうという展開になった。
そんな検討室の雰囲気がガラリと変わったのは、61手目▲2五銀打の局面だ。ツツカナの攻め駒がほとんどなくなり、船江五段の王様の周囲は広々として、逃げ場所もたくさんある。飛車角も、すべて船江五段の手駒になった。さすがにこれは船江五段が勝勢だ。画面に表示されているツツカナの評価値も、みるみる下がっていく。持ち時間もたっぷり残っている。あとはどう反撃して決めるかだけだ。
71手目▲8二飛車打。もう読み切りましたよという宣言のような一手。検討室や解説のプロ棋士たちは、より安全な▲7一飛車打からの勝ちを読んでいたが、すぐにこちらでも勝ちだという結論が出た。終盤力に定評のある船江五段らしい、鮮やかな決め手だ。
「なるほど。これはカッコイイ。10倍返しですね(笑)」(鈴木大介八段)
「前回は大丈夫だなと思ってたら逆転負けしてしまったんですけど、これはさすがに」(船江五段の師匠・井上慶太九段)
16時34分、ツツカナが投了。『電王戦リベンジマッチ』は、船江五段が見事に雪辱を果たした。結果から見れば、船江五段の完勝と言ってよい内容であった。
「練習では五分五分というところだったので、今回はたまたま自分の番だったのかなと」(船江五段)
「今回は負けるべくして負けたと思います。とても楽しかったです」(一丸氏)
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「電王戦リベンジで破れたツツカナ 第3回での対局はどうなる?」
※画像で紹介 対局とは別フロアで行われていた解説会の模様も
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