ライフ

海外で日本人旅行者に会いたくない【高野秀行×丸山ゴンザレス“旅の達人”対談】

高野秀行,丸山ゴンザレス

高野秀行氏(右)と丸山ゴンザレス氏(左)、旅の達人二人が語り合う!

 行楽シーズン、ゴールデンウィークが来月に迫ってきた。海外旅行に行く人はそろそろ最終予約が迫っている時期だろう。ただし外国では予想外のハプニングやトラブルに見舞われたり、反対に海外旅行だからこそ起きる笑ってしまう珍事もある。  そんな経験を積み重ねてきた旅の達人が、過去から現在までの体験談や昨今の旅事情を語り合った。 『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞を受賞した高野秀行氏、そしてインタビュアーは、犯罪ジャーナリストとして国内外のトラブルを追い続ける丸山ゴンザレス氏。トラブルを回避して、春の旅を何倍も楽しむポイントとは? ◆旅の初心者時代にあったこと 丸山ゴンザレス(以下、丸山):海外旅行だと世代に関係なく、行っているエリアが違うと全然わかってもらえないこともあります。例えば国際電話屋なんかは「こういうのあったよね」という話をしても携帯電話が普及する前に東南アジアを旅した経験がないと、なかなか理解してもらえません。もちろん自分の年齢のせいもあると思うんですけどね。特殊な旅をしているイメージが強い高野さんの若かりし頃ってどんな感じでしたか? 高野秀行(以下、高野):昔のアフリカだと、どこの空港でも荷物チェックが酷かったんだけど、それでもチップを渡すとX線検査とかフリーで通してくれたね。ある時5ドル渡したら、すごく感動されて「いいよ」じゃなくて「うちへ来い」って言われて「なんだよ!」って思って。だって出国しているんだよ。行けるわけないじゃん(笑)それで、あとになって財布見たら5ドルは残っていて50ドル札がなくなっていた。 丸山:どのタイミングで気づいたんですか? 高野:飛行機に乗ってから残金を確認していたときに、何かあったときのために小銭は用意しておくんだけど、「あれ……5ドルは減っていないのに50ドルは減っている。ということは50ドル渡してしまったのか!だからうちに来いって言ってたのか」って。 丸山:それは歓迎したくなりますね。 高野:でも行けない(笑) 丸山:高野さんのネタは大きすぎて共感しづらいです(笑)入り口はよくある越境トラブルの話しなのに高野さんの場合は跳ねる率が高い! 高野:普通のもあるよ(笑)最初にインドに行ったときなんか、もう初心者だから汚い格好をしていたり、1ルピーでも安い宿に泊まっているほうがえらいみたいな価値観にみんなおかされていたから。会うと「宿いくら」って聞くんだよね(笑)。いまではそんなもん聞いてどうすんだよって思うんだけど。情報交換として聞くのはいいんだけど。 丸山:いまでもいますよ。若者でもあの世代のあの感じの人はいるみたいで、流転していくみたいです。ここ15年くらいで微妙に変化したとすれば、カオサンロードが六本木みたいな超おしゃれスポットになっちゃったことですかね。貧乏臭い若者が全然いなくてむしろおしゃれな外国人や地元の若者であふれている。ただ、そんな若者たちともよくよく話してみるとインフラは変わってもマインドは変わらないという感じがします。実際、貧乏くさい話はしてますからね。 高野:なるほどね。 丸山:ともかく高野さんにも初心者の時代があったんですね。全然想像つかないですけど。 高野:そりゃあったよ(笑)。ただ、今でもそんな達人とかじゃないから外国で日本人の一般旅行者に会いたくないんだよね。下手に自分のことを知っている人がいると嫌だから。 丸山:海外で日本人とかぶったときはどんな話をするんですか? 高野:(行く場所が場所だけに)それ自体はほとんどないんだけどね。 丸山:ソマリランドなんかは特に?
高野秀行

「今でも旅先で日本人と会いたくない(笑)」

高野:日本人がいないね(笑)。そもそもソマリじゃなくても日本食レストランとか、日本人のたまり場に絶対に行かないし。 丸山:日本人旅行者に「高野さんですか?」とか言われると困りますか? もしくは相手が高野さんだって認識していて「ご一緒してもいいですか」とか「着いていきます」とか言われたら? 高野:嫌だよそんなの(笑)。もう超迷惑だよ。道に迷って『地球の歩き方』をめくっているところを見られてネットに書かれたりしたらどうしようって感じだし(笑)。 丸山:自分でネタとして話している分にはいいけど、人に見られるのは嫌ですよね。 ●Vol.2「新婚旅行で世界一周するという人たちが心配」に続く⇒https://nikkan-spa.jp/613374 【高野秀行】 1966年生まれ。ノンフィクション作家。 早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。1992-93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、2008-09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など著書多数。 【丸山ゴンザレス】 1977年生まれ。犯罪ジャーナリスト、旅行作家、編集者。 海外の文化、歴史、危険地帯に造詣が深く、アジアやアフリカを中心に取材旅行を定期的に行い、雑誌や書籍などに旅行記を発表している。また合法・非合法にかかわらず潜入取材を得意とし、裏社会に関する著作を、「丸山佑介」の名義で発表している。著書に『アジア罰当たり旅行』(彩図社)、『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)など多数。
謎の独立国家ソマリランド

世界をゆるがす、衝撃のルポルタージュ、ここに登場

海外あるある

海外初心者からディープな旅行者まで共感

テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート