【後編】「日本は中国やドイツのように、したたかな通貨政策を」永濱利廣氏

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◆意図的に「市場の評価に働きかける」なんて可能?

永濱 例えば、仮に「復興国債の日銀の引き受け」としたとしても、日本は、今はまだ国債を国内で消化することができていますから、今すぐ金利が上がるという事態にはならないと思います。それに、日銀は「輪番オペ」といって、毎月1.8兆円の国債を買っているんです。それを一時的に10兆円程度に増やしたところで、すでに毎月毎月国債を買っているんですから、同じですよね。日銀は国債を70兆円ほど持っているんです。それが10兆円増えたところで本質的な違いはないですし、むしろ多少円安になっていいかもしれません。

野田政権がひたすら「復興増税」を急いでは、ますます景気が悪くなる可能性もありますから、タブー視せず「日銀の復興国債引き受け」も検討してほしいですね。米国も中国もドイツもしたたかに国家を運営しています。日本のフェアプレイ精神は素晴らしいですが、もっとしたたかになってもいいのではないでしょうか。

◆消費税増税は行われる?

永濱 税収が少ない主な理由は、デフレで景気が悪いことに加え、消費税率が低いからです。日本の財政状況を考えると、将来的には増税をしないといけないでしょう。しかし、景気が悪いなかで増税しても税収は減ってしまう可能性があります。実は過去、最も税収が多かったのは97年で、消費税率を引き上げたときだったのです。政府は先行きの税収増を期待していたでしょうが、実は増税しても、翌年以降はむしろ税収が減り続けてしまったのです。

なぜならば、デフレ下で大増税をしたからです。まずはデフレを克服し、景気回復と円安に誘導する政策を取ることが重要であり、増税をしたからといって、税収が増えるとは限らないのです。

ただ、デフレを脱却したからといってすぐに増税できるわけでもありません。

そこで、「名目経済成長率が安定して2%を上回ったら、消費税を2%上げます」と約束しておくと、国民も「景気が悪い状態では消費税が上がらない」と安心できますし、当局も「景気がよくなれば消費税率を確実に上げることができる」わけです。

いずれにしても、デフレ下で増税するのではなく、まずはデフレ脱却、それには円高を止めることが日本の最優先課題だと思います。


第一生命経済研究所 主席エコノミスト・永濱利廣氏の最新著書『日本経済の本当の見方、考え方 円の実力は1ドル=110円』(PHP研究所/1400円+税)では、円高、低迷するGDP、貿易赤字など今の日本が抱える問題、そして世界経済の大きな流れを掴むことができ、経済の地盤沈下が止まらない日本が立ち直る“唯一の道”を提唱している。

取材・文/横山 薫(本紙) 撮影/山川修一(本誌)




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