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「日本は中国やドイツのように、したたかな通貨政策を」永濱利廣

永濱利廣テレビや雑誌などさまざまなメディアで活躍する、第一生命経済研究所・主席エコノミストの永濱利廣氏は、「まだまだ円高は続く」と警告し、「日本はもっとしたたかに、円の過大評価を修正する政策を」と提言する。

◆なぜこんなに円高が進んでいる?

永濱 世界経済を牽引している米国や中国が、日本の失政を反面教師として、なりふり構わない景気下支え策を取っているからです。1985年のプラザ合意以降、円高不況を懸念し大規模な経済対策や金融緩和を実施、それがバブル経済を生み出しました。

中国が人民元の大幅な切り上げに応じていないのは、この日本の失敗を見てきているからです。さらに、日本はバブル崩壊後の1990年代にデフレに陥りましたが、金融政策・財政政策のタイミングが遅かったこと、そしてその規模も不十分であったことが円高の進行を招き、デフレを長期化させてきました。

米国がリーマンショック以降、双子の赤字を抱えたまま、財政支出も増やし、大型の金融緩和も継続しているのは、日本の20年間の失敗を見てきたからです。このように、世界の二大大国がなりふり構わない政策をとっている一方、大胆な政策が取れない日本はデフレ・円高が止まらず、地盤沈下が起きているのです。

◆円高を止めるには?

永濱 円高・ドル安の背景には、米国をはじめとする世界的な金融バブルの崩壊があります。景気をよくするために国がお金を使い、国の借金が増える。そのため、金融危機が起きたあとというのは、財政危機が起きるものなのです。今まさに、その状況なわけです。

その借金を減らすためにはどうするかというと「お金の価値を実力相応に戻す」、つまり「デフレから脱却する」ということです。日本は2003年から2006年、日銀の当座預金残高を積み増すことでバランスシートを1.3倍に拡大しましたが、米国はリーマンショック以降に住宅ローン担保証券や国債を直接購入し、中央銀行のバランスシートを3.2倍まで拡大しています。

こうした金融政策の対応の差が、日本では円高が進行したのに対し、米国ではドル安が進行したという違いを生み出したのだと思います。ドルは基軸通貨なので「弱いドル」なんて表明できませんが、心の中では「弱いドル」にしたいと思っているはずです。実際、オバマ政権はドル安による「輸出倍増計画」を表明しています。結局、自国通貨を安くして海外に景気をよくしてもらわないと、金融危機のあとの景気は回復しないのです。

では、ドル安・円高を止めるにはどうすればいいかというと、ドルの供給量に負けないくらい円の供給量も増やすことです。

また、供給量以外の視点でいうと、米国の債務上限引き上げなどで「米国の信任が落ちてドル安になっている」という面がありますから、日本もより直接的に市場の評価に働きかけるようなことをすればいいのです。

⇒【後編】に続く 『意図的に「市場の評価に働きかける」なんて可能?』
http://nikkan-spa.jp/68950

※第一生命経済研究所 主席エコノミスト・永濱利廣氏の最新著書『日本経済の本当の見方、考え方 円の実力は1ドル=110円』(PHP研究所/1400円+税)では、円高、低迷するGDP、貿易赤字など今の日本が抱える問題、そして世界経済の大きな流れを掴むことができ、経済の地盤沈下が止まらない日本が立ち直る“唯一の道”を提唱している。

取材・文/横山 薫(本紙) 撮影/山川修一(本誌)




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