リストラ回避のための[社内転職]――業績悪化の部署からは即撤退が生き残る道!?
2年前、NECが部長クラスを対象にした、ドラフト会議を実施するトレード人事制度を発表し、話題を呼んだ。グローバル化が進むなか、生き残りをかけた日本企業は、こうした社内トレードを活性化させることで、人材育成をしようとしている。
しかし昨今、NECのように人事部主導の制度としてではなく、会社で生き残りをかけた40代サラリーマンたちが自ら率先して行う“社内転職”が活況を呈している。大手電機メーカーのSに勤務する加藤裕一さん(仮名・41歳)も社内転職に成功した人の一人だ。
「ウチの会社は世界展開もしている大企業だったんですが、ここ数年、業績が悪化。手広くやっていた各事業が廃止になって、早期退職者を募集するようになったんです。でも、みんな辞めたくない。そこで、業績が悪い部署にいる連中は、ほかの部署にトレードしてもらうべく、社内で転職活動を始めたんですよ」
業績が安定している部署の部長クラスにゴマを擦り、その部署に引き抜いてもらう。もちろん、早期退職者の数は決まっている。その数に合わせるため、部長もトレードという形を取らざるを得ず、その部署から追い出される人は事実上のリストラ。会社内は疑心暗鬼になってしまうことも少なくないという。
「自分も業績不振だったエレクトロニクス事業のある部署からトレードしてもらい、何とか今も正社員としてやっていけています。こうした社内転職は30~40代の社員の間で特に活発に行われていて、社内接待が得意な人間が残りますね。自分も相当、今の部長に気に入られるため、努力しましたから。もはや“やったことがないから”“キャリアが傷つく”とか言っていられないレベル。総務だろうと経理だろうと、何でもやれないと会社内では生き残れません。それほど日本企業の体力は落ちているんだと思いますね」(前出・加藤さん)
こうした社内トレードは、さまざまな事業に手を出す大手企業に多く、業績悪化とともに活況。早期退職者リストに載らないため、サラリーマンたちの生き残りをかけた戦いが繰り広げられている。 <取材・文/日刊SPA!編集部>
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