“パンクの生きる伝説”横山健インタビュー。生き様を刻んだドキュメントDVD発売の胸中とは【vol.2】

 KEN BANDのボーカル&ギター、Hi‐STANDARDのメンバー、インディーズレーベル「ピザ・オブ・デス」の社長、そして2児の父親……。いまやパンクロック界の“生きる伝説”とすら言われる横山健には、さまざまな顔がある。

 そんな彼の活動や、これまでの半生などありのままの姿を収めたドキュメント・フィルム「横山健 -疾風勁草(しっぷうけいそう)編-」が、このほど発売された。

 もともと昨年に映画として上映された同作品は、2週間の限定上映にもかかわらず約3万人を動員して大きな話題となった。加えて、今年5月には初の著書『横山健 随感随筆編』(育鵬社)を上梓するなど、横山健はここ最近、本業の音楽以外での発信も旺盛に行っている。そこにはどのような心理があるのか……。その胸中を語ってもらった。

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――昨年の映画上映、今年の書籍発売と、ここ1年ほどは本業の音楽以外で横山さんのパーソナリティを、かつてないほど露出した時期だったと思うのですが、なにか心境の変化があったんですか?

横山健横山:思っていたのは、音楽家とはいえ音の羅列だけでの勝負はやめたいってことでした。文章や映像を通しての発言、それら全部を含めて自分からの発信として捉えたいなと思う時期だったんです。もちろん今もそう思っていて、こうしてインタビューしてもらうことだって自分としてはものすごく発信しているつもりですし、DVDにしても、単にあの作品はどうだったと話すだけでなく、「40代の東京で暮らす男がどういう風に感じているのか」ということを伝える、いいきっかけだなと思っているんですよね。

――DVDのなかでは「やりたいことをすぐ表現できるのがKEN BANDなんだ」とおっしゃっていましたが、ブログなども横山さんにとって同じような立ち位置ですか?

横山:う~ん、ちょっと違いますね。やっぱり「今日思ったことをすぐ明日できる」と言っても、ライブという場所がないとできないし。「新曲で今日思いついたことを明日メンバーと一緒に形にしよう」と思っても、人前で披露するにはもっと時間がかかりますから。だからどちらかというと、「意識を共有できる人たち」という存在なんですよ。例えば、僕はライブで日の丸の旗を背負ったりするんですが、そういうのも今のメンバーに「俺、ライブで日の丸しょっちゃうからね」と言ったら「わかった」となってくれる。で、メンバーも一緒になってやってくれるという感じで、意識の共有がすごくしやすいんです。

――確かに、横山さんはライブでよく日の丸を背負ってパフォーマンスされています。ともすれば「横山健は“右”なのか?」と捉えられかねない行為ですが、実際にそんな声も……?

横山:そんなにたくさんじゃないですが、確かにありますね。でも、なにか行動しようと思ったら、そういう人からのリアクションや自分の本意ではない受け取られ方をされることは絶対にあるので。最近はヘイトスピーチの問題もありますよね。僕はあの人ら、絶対におかしいと思うんですよ。日の丸が“嫌な意味”を持ってきてしまっているのは、彼らのせいであって、僕のせいではないと思っています。なので、そんな声は自分が旗を振ることの妨げにはならないし、そこを変えたいなという思いもあります。「もっと無邪気でいいじゃん」って。

――では、どんな意図で日の丸の旗を?

横山:W杯やオリンピックで皆無邪気に日の丸を振りますよね? 僕のはアレなんですよ。スポーツは政治と離れて考えられているからなのかもしれませんけど、なら音楽の場で振ったっていいじゃないかって。確かに最初は「コレって右翼って思われちゃうのかな」とも思いましたけど、脱原発といえば左翼って言われて、日の丸振ったら右翼なんて、「どっちでもねぇよ!」って。普通の40代半ばの東京に住んでいるオヤジが日の丸振っているだけだよと。

――主義主張から来るものではない、ということですね。

横山:そう、単純な郷土愛。戦争の歴史や主義主張で“嫌な意味”が含まれちゃうのはもちろん知っていますが、だったらあのデザインを変える動きがあったっていいと思う。僕は、白地の赤という、あのデザインが好きなわけじゃないので。自分の生まれ育った土地をレペゼンする旗だから好きなだけで、別のデザインでも構いやしない。だから、僕のライブで韓国の人が思いっきり韓国の旗を振ってくれてもいいんですよ。「僕は韓国のこの旗を見ると勇気が湧くんです」と。それが中国の旗や、国じゃなくても団体でもなんでも構わない。旗って、僕はそういう物だと思うんです。人それぞれの物だから。

 ネットとかを見ても、今は嫌韓嫌中の意見がいっぱいあるじゃないですか。でも日本人も自分たちのことを見てみろと。ちょっと前までは、首からカメラ下げてどこ行っても写真撮っているのが日本人だって揶揄されていたじゃないですか。それで「いや、そんなんじゃないのに」と思っていたのに、同じことを今は日本人がしている。僕、韓国の政府は嫌いですよ。あの大統領とか、クソだって思います。でも政府がクソなのは日本も変わらない。どこの国政府もクソですから、我々庶民からすれば。僕の韓国人の友達や在日の友達には悪いヤツなんていないし、皆大好きですよ。だから韓国政府の揚げ足をとるのはわかるけど、一人ひとりを攻撃するのは間違っていますよ。

横山健――そこには我々メディアの責任も大きいと思います。

横山:ただ、面白いんですけどね。「韓国の大統領なのに韓国製のバッグを持たない」とか見ると、つい読んじゃいますし(笑)。でも読む人もちゃんと意思を持つべきだと思うんです。前にコラムにも書いたんですけど、踊る阿呆に見る阿呆って言葉があるように、踊らされることも必要だと思うんです。でも、踊るなら踊らされていると自覚しながら踊るべきで、自分の個人としての意見をそれぞれ持って、そういうものと接するべきだと僕は思います。

⇒【vol.3】に続く

<取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/水野嘉之>

横山 健 -疾風勁草編-

パンクロックバンド・Hi-STANDARDの横山健の音楽人生を追ったドキュメンタリー

横山健 随感随筆編

「自分を信じないで、誰のための人生なんだ――」

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