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“第五の権力”になった「ネット匿名勢力」の危険性

週刊SPA!連載<第二次正論大戦> ~ 城 繁幸「頭打ち社会への処方箋」 ~ ◆“第五の権力”になったネットユーザーの持つ危険性とは?
城繁幸

城繁幸

 先日、大阪のファミリーマートを舞台に、複数の人間が店員を恐喝するという動画がネットで公開され、波紋を広げた。土下座までさせる様子も含まれていて、胸糞が悪くなった人も多いはず。  実は筆者自身、学生時代にファミリーマートで深夜バイトをしていて、やはりクレーマーに絡まれた経験があるので、他人事とは思えずにウオッチしていた。  ちなみに筆者は「万引するふりをして、注意されると逆切れする」というパターンでイチャモンつけられたが、「文句あるなら昼間来い」でなんとか追い払えた。それでもすごい徒労感だったし、とにかく腹が立って仕方なかった。  でも、今はネットという、その場に居合わせなくても誰でも繋がれるインフラがあり、かつ、今回は犯人サイドの人間が自らそこに動画を投稿するというミスも犯してくれた。こうして、深夜のコンビニで誰にも知られずに行われたはずだった犯行は万人の知るところとなり、結局、ネット上での反響に恐れをなした犯人自らが出頭するという幕引きとなった。  内容が内容だけに、すかっとした人も多かったのではないか。他人事とは思えなかった筆者も、思わず手をたたいた一人である。 ◆ネットの力は制御できるのか? ネット ただし、筆者は同時に、ある種の不安も感じてしまった。だって、警察による捜査を経ることなく、というか、コンビニ側の被害届すらない段階で、犯人自らが警察に出頭せざるを得なくなるほどのプレッシャーを、ネットの匿名勢力は持っているわけだ。  その力が暴走しないように誰かがコントロールできるのだろうか。そして誤った使い方をされた場合、誰が責任を取るのだろうか。  そういう意味では、10年以上にわたって執拗にネットで中傷され続けたお笑いタレントのスマイリーキクチ問題を筆者はどうしても思い出さずにはいられない。過去の刑事事件について、匿名のネットユーザーが原告も警察も司法も不在のまま「あいつが犯人の一味らしい」「みんなでやっつけよう」とネットで中傷しまくり、出演メディアやスポンサーに抗議まで行っていた問題だ。  一応、警察が動いて摘発したものの、全員不起訴で損害賠償はもちろん、謝罪すら行われていない。はっきりいって、キクチ本人からすれば完全なヤラレ損である。  今回は胸がすくような勧善懲悪の起承転結を見せてくれたネットだが、その力が常に正義を示してくれるとは限らない。良くも悪くも我々はそうした“第五の権力”と隣り合わせにいるということを肝に銘じなければならない。 <処方箋> × “第五の権力”を正しく使え ↓ ○それは正しいこともあれば誤ることもある 【城 繁幸/じょうしげゆき】 ’73年生まれ。人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表。『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)が40万部突破のベストセラーに。『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』が発売中 ※「第二次正論大戦」は週刊SPA!にて好評連載中
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