東映ヤクザ映画は殺伐とした日本社会を穏やかにする!――対談・杉作J太郎×春日太一【後編】
菅原文太や高倉健が亡くなったことで再上映されることもあるヤクザ映画だが、実は絶滅の危機にあるという。東映ヤクザ映画を愛してやまない杉作J太郎氏と、『あかんやつら』で東映京都撮影所のブッ飛びぶりを描いた映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、東映ヤクザ映画の魅力を語り尽くす!
<対談>杉作J太郎×春日太一が保護を訴える!東映ヤクザ映画とその愛らしさ【後編】
⇒【前編】はコチラ
杉作:『大脱獄』もあまり真剣に見ちゃいけない。性欲まみれの室田日出男と郷鍈治が押し入った民家で、ブラジャーとパンティを着けて踊ってすぐ死ぬ時点で合格!
春日:真面目なシーンでいきなり流れているテレビ番組が『日本ペチャパイ選手権』ですからね。
杉作:この映画をみんなが見たら日本も穏やかな国になりますよ!「あんな映画に出ておきながら、文太さんも反戦主義だった」と意外そうに言われてますけど彼の映画は全部反戦ですから!
春日:「上の言いなりになってもロクなことがない」というスタンスは一貫していますよね。戦いの無意味さ空しさが伝わります。
杉作:一方の健さんも自ら進んで戦おうとした役はほぼないんですよ。ただ、エヴァンゲリオン的な暴走モードがあって、映画が終わる15分ほど前に目の色が変わる。
春日:朴訥としていたのが、いきなり凄まじい殺気を放つんですよね。あと健さんは肉体がすごい。日本で元祖に近い肉体俳優でもある。背が高くて肩幅もある、ボクシングで鍛えた隆々の体で、上半身裸で斬りかかる。
杉作:『野性の証明』より『ランボー』をやるべきでしたね。しかも、ヤクザ映画はこうやっていろんなキャラが出てくるから、好きな人を追いかけてほしい。「オレは能力があるのに何でみんな冷たいんだ」「古い仕組みの中で損をしている」という話の筋は、実力があるのに男性社会でツラい思いをしている女性にも響くはず。しかもみんな面白くてかわいい! 全員ぷくぷくシールにして売りたい!
春日:東映は各俳優の名言入りのLINEスタンプを出すべき。シナモロール(※サンリオのキャラクター)風の遠藤太津朗とか。
杉作:くまモンに対抗して片桐竜次さんを著作権フリーに!
<オレたちスコ世界遺産>
●『大脱獄』(1975年公開)
高倉健、菅原文太が揃い踏みで石井輝男監督の“スーパーアクション巨編”という触れ込みだが、「先がどうなるかまったくわからない変な映画」(杉作)、「2大スター共演なのに驚きのいい加減さ」(春日)という怪作
取材・文/鼠入昌史(Office Ti+) 古澤誠一郎 田幸和歌子 福田フクスケ 安田はつね(本誌) 撮影/与儀達久 写真/時事通信社
― 俺の中では重要文化財 オレスコ世界遺産【10】 ―
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『大脱獄』 雪原脱獄の果てに、遂げねばならない復讐があった! 石井輝男監督が壮大なスケールで描いたスーパーアクション巨編!! ![]() |
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