『機動警察パトレイバー』は究極のサラリーマンマンガだった!?
『機動警察パトレイバー』『究極超人あ~る』などで知られる漫画家・ゆうきまさみが、今年でデビュー35周年を迎えた。1980年にアニメ『機動戦士ガンダム』のパロディマンガでデビュー。その後、「週刊少年サンデー」でヒット作を連発し、現在は「ビッグコミックスピリッツ」連載の『白暮のクロニクル』に加え、「月刊!スピリッツ」でも『でぃす×こみ』を不定期連載中。常にメジャー誌の第一線で活躍しつつ、マニアな読者や同業者にもウケがいいという、独自のポジションを築いた作家である。
そんな人気作家の35年間の足跡を振り返ったムック『文藝別冊・総特集ゆうきまさみ』(河出書房新社)が出版され、話題を呼んでいる。発売1週間で大量重版決定、ツイッターの感想まとめは1万件以上の閲覧数。「漫画文化と80年代の歴史資料的な価値もあるムックになっている」「ご本人インタビューや対談寄稿山盛りでかなりの読み応え」「資料的価値はもちろん多くの漫画家さんとの対談は『マンガを描く』というお仕事の緻密さを伺える内容で感心しきり」といった感想ツイートに代表されるように、ゆうきまさみファンのみならず、マンガ好きなら読んでおいて損のない内容だ。
3万字インタビュー、羽海野チカ・荒川弘との鼎談はもちろん、藤田和日郎、安野モヨコ、とり・みき、吉田戦車、京極夏彦ら、交流のある漫画家&小説家からの寄稿も豪華。そこでSPA!があえて注目したのは、高橋留美子からのメッセージにある「お役所描かせたら日本一ですね」というフレーズだ。
「確かに、ゆうきさんの作品にはお役所がよく出てくるんですよね」と語るのは、同誌でインタビュー等を担当したマンガ解説者の南信長氏。
「今連載している『白暮のクロニクル』の主人公は厚労省の役人ですし、その前の『鉄腕バーディー』の主人公も宇宙連邦警察の捜査官、つまりは公務員。ただ犯罪者と戦うだけでなく、主人公が組織の論理と自分の中の正義感や倫理との間で板挟みになり、そこにどう折り合いをつけるかというのも見どころのひとつです。というか、『機動警察パトレイバー』なんて、もろに警察組織の話ですよね。ゆうきさん自身、『パトレイバー』については〈「警察官もサラリーマンだ」というのは大事にしよう、みたいなのはありましたね〉と語っています。単なるロボットバトルものではなく、主人公がいかに社会人として成長していくか、という物語。同時に、労使問題や中間管理職の心得、コンプライアンスに関わるようなネタも描かれている。ある意味、究極のサラリーマンマンガと言えるでしょう」
子供の頃に読んだことのある人も、この機会に読み直してみると新たな発見があるかも。35周年記念ムックと合わせて、今こそゆうきまさみ作品を手に取るべし! <取材・文/日刊SPA!編集部>
『文藝別冊・総特集ゆうきまさみ』 異端のまま王道を往く |
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