みうらじゅん&リリー・フランキー「“やりがい”なんて考えないほうがいい」
―[みうらじゅん&リリー・フランキー]―
3.11以降、景気が停滞していた日本経済。その後、有効求人倍率0.67倍、完全失業率4.1%(ともに2011年9月調べ)と4か月連続で改善し、若干の景気回復を期待し始めた矢先、ギリシャ、イタリアの財政危機で、景気の先行きは不透明になっている。さらに11月9日付の毎日新聞によると、生活保護受給者が205万4905人と60年ぶりに過去最多を更新したと、厚生労働省が発表した。同紙によると、景気低迷に歯止めがたたない上に、東日本大震災の被災者の雇用状況が改善されなければ、今以上に受給者は膨らむ可能性があると報じている。
この状況に、鬱々としている20~30代のサラリーマンも多いはず。このまま年末に向けて、さらには2012年を我々はどう生き抜けばいいのか? SPA!の巻頭グラビア「グラビアン魂」の著者であるみうらじゅん氏とリリー・フランキー氏が緊急提言を寄せた。
――この不況で、仕事や会社に不安を感じている人たちがたくさんいるようですが……。
みうら :だいたい本当に不安なときって、逆に不安を感じないようにできてるもんだと思うよ。
リリー :金を持っている人のほうが、絶対に金の心配してますもんね。それを現状維持しようとか……。そうなってくると、攻めがないぶん、余計に不安になりますよね。
みうら :守りって、これまた怖い状況なんだよね。
リリー :でも、人が実際に不安だと思ってることって、漠然としてますよね。不況で5年、10年先のことが見えないから不安とか言うけど、心配しなくても、来年死んでるかもしれないから(笑)。
みうら :その「不況」とか、とにかく時代のせいにする人がいるけど、そもそも何と比較して言っているのかよくわからない。世間一般といっても、その実態がないわけですよね? あと、ぼくらは自由業だから、比較のしようがない。自分が(他人と比べて)どれくらいのレベルかなんて、いまだにわからないし。
リリー :不景気だから仕事がなくて運が悪いとか考えるんじゃなくて、逆にそのときに生まれたことをラッキーだと思って商売をしている人がたくさんいるわけですしね。だから、不安を感じたり、自分に運がないと思うんなら、逆手にとって考えたほうがいいですよね。
みうら :あと不安になるって、みんな飲みずぎじゃないの(笑)。サラリーマンって、夕方から飲んでるじゃないですか。夕方からあんなに飲んだら、そりゃ不安になるよ。
リリー :同じ会社の人とばっかり飲んだり話したりしてたら、絶対に不安になりますよ。たまには、違う畑の人と飲まないと。
みうら :そうしないと、普通は煮詰まるよね。
――そんな不況のなか、自分の「やりがい」が見つけられない人も多いようです。
みうら :やりがいって、一時期、流行ったよね。世間的には、「感謝されること」「達成感」「収入」の3つらしいよ。
リリー :求人誌のコマーシャルとかでよく聞きましたね。
みうら :よく「仕事にやりがいがない」とかって言う人もいるけど、なければ仕事なんかやれないじゃないですか。
リリー :でも根本的に「お金」をもらうことがすでに「やりがい」の一つであるはずなんですけどね。
みうら :そもそもは、あまり考えないほうがいいんじゃないかな、やりがいって。
リリー :そんなのオレらも根を詰めて話されたら、自分のやりがいのなさに泣き出しますよ、たぶん(笑)。
みうら :やりがいって、今より先のこととも関係するじゃないですか。頭で考えても、未来のことなんて当たったためしがないし、考えてもしょうがないということに早く気づくべきなんだよね。少しは考えなくする努力はしたほうがいい。
⇒みうらじゅん&リリー・フランキー「仕事って、人生の本業じゃないんだよ」に続く
https://nikkan-spa.jp/91994
【参考書籍】
『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』
みうらじゅん、リリー・フランキー著 本体1200円+税
みうら&リリー両氏が、人生、仕事、そして生と死について1年間にわたり真剣に語りつくした、両人いわく「最初で最後の」珠玉の対談集! ハッシュタグ