「冷え性」になるのは日本人だけ!? 万国共通の症状ではない理由
「冷え性は女性特有のもの」と思っている人は多いだろうが、男性にも増えつつある“隠れ冷え性”。実はこの冷え性、万国共通の症状ではないという。
『冷えと肩こり 身体感覚の考古学』著者の白杉悦雄氏(東北芸術工科大学大学院長)によると、冷え性は「日本人の特に女性に多い症状」といわれることが多いという。また肩こりなどに至っては、欧米人や中国人にはそれを認識し、表現する言葉がないのだそうだ。
「人間の体の生物学的な働きは、国や地域の違いにかかわらず同じなので、外国の人の体にも『冷え性』と同じ現象は起こっているはずです。ただ、それを病と捉えるかどうかは、文化により違う。また『苦痛と感じるか否か』という感じ方の部分にも、文化的な要素が大きく左右しているんです」
日本の伝統医学では、古くから冷え性は女性の病の一種と認識され、漢方薬もよく売れたという。
「江戸時代には、女性の冷え性の自覚症状に相当する『血の道の病』というものがありました。冷え性という言葉が使われはじめたのは、西洋医学が入ってきた明治期以降です。なお西洋医学には、『病気は特異的な原因があって起こるもの』という考えがあるため、自覚症状主体の冷え性は研究対象として軽視されはじめます。冷え性に『症』ではなく『性分』の『性』の字が使われているのはそのためです」
戦後には一部の医学論文でも冷え性が扱われたが、西洋医学からは軽視される状態は今も継続中だという。伝統医学の用語や治療法が今も用いられているのはそのためだ。
では男の冷え性が広まる可能性は?
「人々が頭に描く体のイメージは、その時代の医者や科学者の語る言葉により形作られます。彼等が男性の冷え性について語る機会が増えれば、その症状を自覚する人は、今後増えていくかもしれませんね」
【白杉悦雄氏】
東北芸術工科大学大学院長・大学院芸術工学研究科長。専門は中国・日本の医学思想史、中国科学史。著書に『冷えと肩こり 身体感覚の考古学』(講談社選書メチエ)など
― 秋冬に発症する[男の冷え性]が危ない ―

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『冷えと肩こり 身体感覚の考古学』 中国や江戸の医学史研究をベースに、肩こり、冷え性、うつ、疝気などの「構造」をさぐる。 ![]() |
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