ノーベル賞受賞者にみる栄誉教授と名誉教授の違いって?
今年のノーベル医学・生理学賞の受賞者に、細胞が不要になったたんぱく質などを分解する「オートファジー」の仕組みを解明した東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が選ばれた。日本人のノーベル賞受賞は3年連続、アメリカ国籍を取得した人を含めて25人目で、医学・生理学賞の受賞は去年の大村智氏に続き4人目。
昭和42年に東京大学教養学部を卒業し、米ロックフェラー大学に留学した大隅氏は、愛知県岡崎市にある基礎生物学研究所の教授などを経て、現在は東京工業大学の「栄誉教授」を務めている。よく耳にする「名誉教授」とは何が違うのか?
東工大によると、この称号は教授、退職者、卒業・修了生のうち、ノーベル賞や文化勲章、文化功労者、日本学士院賞など教育研究活動の功績をたたえる賞もしくは顕彰を受けた者に対して付与される。大隅氏は、飢餓状態に置かれた細胞が飢餓を乗り切るために自らの細胞の一部を分解し、栄養源とする「オートファジー」を世界で初めて肉眼で確認し、そのメカニズムや関連遺伝子を次々と解明。こうした研究業績や受賞に対して、2014年に栄誉教授の称号が授与された。
昨年、医学・生理学賞を受賞した北里大学の大村智氏の肩書きも「特別栄誉教授」であるように、こちらも大学が独自に作った称号で、同大規程によると、対象者は「ノーベル賞、文化勲章、文化功労者、日本学士院賞または同等の賞」を受けた教職員などとなっている。また、同等の称号は他大学にもあり、東京大学は2004年に「著しい功績をあげた者」に終身で特別栄誉教授の称号を与える制度を創設。ノーベル物理学賞の小柴昌俊氏ら4人に授与している。
大学がこうした称号を設けるのは、単なる表彰という意味合いにとどまらず、学生や研究資金の確保で大学間の競争が激しくなるなか、優秀な研究者の存在をアピールする狙いもあるという。一方の「名誉教授」は学校教育法に定められた呼称。大学に教授その他として一定の年限を勤めた者で、「教育上または学術上特に功績のあった者」に与えることができ、対象者は各大学が選ぶ。名誉教授の受賞は、2010年にノーベル化学賞を受賞した北海道大学の鈴木章氏らが当てはまる。
今年の受賞者は、3日に医学・生理学賞、4日に物理学賞、5日に化学賞、7日に平和賞、10日に経済学賞がそれぞれ発表される予定。文学賞の日程は明らかにされていないが、13日頃になるようだ。日本人の受賞を心待ちにしたい。
<取材・文/北村篤裕>
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