西城秀樹さんの死でまたまた湧き上がる「サウナはカラダに悪い説」の真相は?
昭和を代表する国民的スター歌手・西城秀樹さん(享年63)が亡くなった。直接の死因は急性心不全だが、西城さんは48歳と56歳のときに脳梗塞を発症している。豪快な性格で知られ、病で倒れる前は1日にタバコを3~4箱、一晩でワインを2本空けていたと本人が発言。さらに、ここに来て注目されているのが趣味のサウナ通いだ。最初の脳梗塞も、水を飲まないままサウナに入ったことが原因とされる。西城さんは、サウナで汗を出し切った後のビールやラーメンを何より楽しみにしていた。
これで勢いづいたのが、サウナ反対論者たちである。サウナを巡っては「身体にいいのか? 悪いのか?」という議論がかねてより活発に行われていたのだが、西城さんの件を機に「ほれ、見たことか! やっぱりサウナは身体に毒じゃないか!」といった論調が目立つようになった。
ネットを見ると、≪西城秀樹関連のニュースでサウナが話題やけども、TOKIOの松岡君もサウナで脱水起こして救急搬送されてるよね≫≪西城秀樹もサウナ、長嶋もサウナ、若島津もサウナ……サウナってやっぱ危険なんだな~≫≪ミスターと共にサウナによって壊された昭和のスター≫≪サウナってじっと汗流してるだけで痩せる訳じゃないし、血がドロドロになるし、尿酸値上昇や脳梗塞のリスクもすごいあるんだよね≫などの意見がズラリ。中には≪やはりサウナはバビロン。悪魔の棲む部屋だった≫などとオカルトめいた書き込みまで散見できた。だが、イシハラクリニックの石原結實院長はこうした意見に異を唱える。
「サウナが原因で心不全になるというのは、おかしな話。というのも、鹿児島大学の鄭忠和教授は心不全の患者をサウナで治しているからです。和音療法と呼ばれるこの治療は’00年から始まっており、めまぐるしい成果を上げている。そのやり方は65度くらいの低温サウナに約15分入り、それを週3ペースで繰り返すというもの。健康のため、サウナは積極的に利用するべきです。ちなみにサウナの本場・フィンランドでは、“サウナに入る回数が多い人ほど、脳卒中、心臓病、がん、うつ病になる確率が下がる”という研究結果も出ています」
そもそも西城さんや長嶋茂雄が倒れたのは脳梗塞。元若島津の二所ノ関親方が倒れたのは脳出血。脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血は、まるっきり逆の病気である。それをごっちゃにして「サウナは脳に悪い」と決めつけるのは、あまりにも短絡的な意見と言える。
「ただ、“何事もほどほどに”とは言えますね。やせ我慢して15分も20分も入るのは、身体に負担がかかりすぎる。“今日は何分入る!”とか事前に決めることはなくて、気持ちいいなと感じる程度で出るのが正しいサウナの入り方なんですよ。サウナで汗を流すと気分もスカッとするじゃないですか。そして水分をたっぷり摂ればいい。あとはサウナに入る前、少しぬるめのお湯に浸かると身体に優しいかもしれません」(石原院長)
たしかに根性論丸出しのサウナー(サウナ愛好家)は、中高年男性を中心によく見かける。こうした“昭和のサウナ道”は、非科学的という意味で「運動中、水分を摂らない」「膝が壊れるまで、うさぎ跳びを繰り返す」などの前時代的トレーニングに通じるものがある。昭和どころか平成も終わろうとしている今、スマートなサウナ入浴を心がけたいものだ。
「私自身、無類のサウナ好き。週2度ほど足を運びますが、サウナ室内で倒れている人なんて見たことないですけどね。イギリスには“人が犬に噛まれてもニュースにならない。人が犬を噛んだらニュースになる”というジョークがある。それと同じですよ。毎年、日本人は100万人以上が亡くなっていますが、その中でサウナが死因という人がどれだけいます? がんや交通事故のリスクに比べたら、いかに微々たるものか……。有名人が倒れたからといって、印象論に左右されすぎですよ」(石原院長)
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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