「お兄さん～。最新のハリウッド映画から日本の人気AVまで見放題だよ！」 　中国・広東省内のある電気街。小さなブースから身を乗り出して売り子が薦めるこの商品は、ただのUSBメモリに見える。しかし、これこそが今、中国の「大衆ガジェット」として人気を集めている「U盤電視棒」（USBテレビスティック）なのだ。 　説明しよう。このUSBスティックをPCに挿すと、自動的に専用のライブラリが立ち上がり、売り子の口上の通り、最新映画から海外テレビ、アダルト映像が見放題だというわけだ。が、USBスティック自体にデータが収蔵されているわけではない。なんと専用の違法配信サーバーに繋がり、そこからストリーミングで見れるというわけだ。 　さっそく記者はこの商品を購入（ちなみに料金は80元＝約1000円）。PCに挿してみると、怪しい専用ランチャーが立ちがある。そこにはハリウッドから日本、韓国、香港などあらゆる国の最新映画、海外のテレビ局やスポーツチャンネル、人気歌手のPVまで、数百本にも及ぶコンテンツがメニューに表示された。試しに『ドラゴン・タトゥーの女』をクリックしてみると、かなり待たされたのち、映画が再生された（しかも冒頭にCMつき…）。 　これぐらいならばまだ驚かない。しかしここからがある意味凄かった。ライブラリには隠しメニューがあり、そこをクリックしてパスワードを打ち込むと、アダルトメニューが出現するのだ。そこにズラりと並ぶ日本のAV作品や洋ピン……しかし、目を凝らしてみると「国内作品」というカテゴリがあるではないか。国内とはもちろん、中国国内という意味だ。 　恐る恐るクリックしてみる。タイトル一覧が現れた。そのうちのひとつをクリックしてみる。モーテル風の部屋に女子高生が客にジュースを運んでくる。部屋にいる客はなぜか裸にバスタオルを巻いた状態。女子高生がジュースを渡し、客が受け取る瞬間、バスタオルがはだけ、下半身が露わになった！　すると、なぜかそのままセックスシーンに突入という意味不明なAVだった。80年代日本で一世を風靡した伝説の裏ビデオ『洗濯屋ケンちゃん』にも劣る、ショボすぎる無修正ポルノ！　その他にも明らかに日本のAVをパクった素人ナンパモノの劣化バージョンなど、とにかくクオリティの低すぎるAVがたくさん入っていた。 　この商品は大学生などに人気だというが、清々しいほど著作権を無視した違法ストリーミングに当局も黙っていられなくなったのか、最近では販売業者への摘発も行われている。良い子のみんなは、中国でこの商品を見つけても、決して持って返ってきちゃいけないよ！ 　　 【取材・文・写真／ドラゴンガジェット編集部】 ガジェット好きのライターや編集者、中国在住のジャーナリストが中心メンバーとなり、2012年1月から活動を開始。東京と深セン、広州を拠点に、最新の話題をお届けする。