『いだてん』徳井の熱演は、ポリコレ優先のドラマを変えられるか
12月15日放映の最終回に向けて、盛り上がりを見せているNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』。
徳井の演じる大松博文は、1964年東京五輪で金メダルを獲得し「東洋の魔女」と呼ばれた日本女子バレーボールチームの監督。
彼は「鬼の大松」という異名の通り、選手が怪我をしていも練習を休ませなかったり、選手の仕事が終わった夕方16時から24時まで365日毎日練習をしたりという、今の時代では考えられないほどのスパルタ的な指導方法で有名だった。大松が選手に対し大声で怒鳴り、選手たちに強烈なボールを叩きつけまくる当時の練習風景の映像は、思わず目を背けたくなるほどの強烈なもの。
しかし、史実では『いだてん』で描かれていたように、大松は選手の親御さんに挨拶に行ったり、同じ釜の飯を食べたり、五輪後は選手の見合い相手探しに奔走するなど、そこには一方的なスパルタや根性論では片付けられない絆と選手の意志があった。
第45回「火の鳥」(12月1日放送)は、そんな彼らがメインとも呼べる回。結婚適齢期を迎えた選手たちの将来、そして家族を本気で心配し、葛藤する姿が描かれていた。
「俺がやるて言うたら、あいつらはついていくって言いよんねん」。そう2年後の五輪のためにバレーボールを続けるか否か悩む大松に対し「2年も待てない男より、2年俺についてこいって言う男がいい」「これが私たちの青春」と、選手たちは訴える。国のためでなく、自分のために東京五輪を目指すことを誓った。
彼女たちの決断は、バケモノ扱いされながら陸上競技に徹し日本人女性として初めてメダリストになった人見絹枝(菅原小春)、日本国民全体の期待のために泳ぎ続け金メダルを獲得した前畑秀子(上白石萌歌)という、過去の女性アスリートから繋がれたタスキの到達点。
どんな苦労があっても「自分のため」にスポーツに挑む時代になったことを象徴する大事なシーンだった。
そんな中、12月1日放送の第45回では、現在、申告漏れ等で活動自粛中のチュートリアル・徳井義実の熱演シーンが放送され、話題を呼んだ。
パワハラ的な発言を時代に合わせた表現に変えるドラマも多いなか、『いだてん』は史実に忠実なまま見事に描いた。
今ならパワハラ・セクハラと叩かれそうな「鬼の大松」
もちろん『いだてん』でもその描写はあり、大松の選手への厳しい姿勢や、女性に対し「ウマ」「パイスケ」「力道山」などの酷いあだ名で呼ぶ様子は、現代であればパワハラやセクハラと言われてしまいそうだ。彼が初登場した回には「虐待ではない」と繰り返しナレーションが入っていたり、岩田幸彰(松坂桃李)が思わず「あなたの指導法、私は感心しません」と苦言を呈すなど、スパルタ指導を現代で取り扱うにあたっての苦労の跡が見受けられたようにみえた。
スパルタでは片付けられない絆
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映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
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