東京五輪延期の後番組も作れない…TV業界、出社自粛で頭を抱える
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、1年延期が決まった東京五輪。2021年開催でも「TOKYO2020」の名称はそのままで、ロゴや公式グッズ、ポスターなどは作り直し不要とされていますが、それでも広告業界やテレビ業界は対応に頭を抱えているようです。
オリンピック延期が決定されたあとも、2020年4月現在では、CMや既に収録済みのバラエティは特に注釈なく放映されています。『東京 VICTORY』(TBS系)などの応援番組も引き続き放映され、バラエティやニュース番組では代表選手がゲスト出演し、五輪への意気込みなどを語っています。CMに至っては「××(スポンサー)は東京2020を応援します」であったり、「東京2020チケットプレゼント」など、まるで何事もなかったかのようなものも。
確かに、2021年に延期されても、代表選手の出場権は今のところ継続している人が多いし、遅かれ早かれ放映されるものと考えればおかしくはありません。予測ができない急なことでしたし、新型コロナウイルスの影響で収録や多くの作業が中止になるなど、差し替える手間がないことはわかりますが、違和感をおぼえてしまうことも事実です。
いずれは何かしらの差し替えはあるでしょうが、CMなどを作り替えるとなれば新しいコストが発生します。スポンサー側にとってもテレビ局側にとっても、大きな痛手となるでしょう。
東京オリンピックを盛り上げる特別番組が、いくつも計画されていたといいますが、ストップせざるをえません。また、オリンピックを前面には出さずとも、ドラマや収録済みの番組では、オリンピックが開催される前提で作られたものも多数。ストーリー内の「もうすぐオリンピックね」「今年のオリンピックを見越して……」などというセリフもどうするか、対応を検討中だと関係者は言います。
ただ、セリフをひとつ削ったことで全体のストーリーのバランスが崩れてしまったり、シーン丸ごとカットせざるを得なくなり、尺が足りなくなってしまう。東京オリンピックがストーリーの起(テーマ)となっている事件ものドラマなどは、お蔵入りになる可能性さえあるようです。
制作側も現在の外出自粛で、差し替えなどの編集作業や会議も思うようにできず、対応できずにいると聞きます。さらに、オリンピック中継や特別番組が予定されていた枠もぽっかり空いてしまい、そこに何を入れるかも未だ決まっていない状況。
あるドラマでは初回や最終回の2時間スペシャルを2週に分けて放送したり、放送回を増やしたりするなどの策が練られているようです。
NHKの木田幸紀放送総局長は3月25日の定例会見で、東京オリンピックが延期になったことについて「放送サービス計画の見直しに着手することになる。非常に厳しい状況だ」と語りました。
まさに東京オリンピックの延期はテレビ業界にとっては正念場の現状。
しかし、オリンピックがやむを得ない状況で突然延期になったことも、状況的に収録作業や編集作業がしづらいことも、視聴者はみな理解しています。スタッフや出演者たちへの手間や感染拡大を防ぐためにも、違和感は承知の上で差し替えなどせず、そのまま放映したり、再放送が増えるのもやむをえないことなのかもしれませんね。
<文/小政りょう>映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
何事もなかったように継続中の番組も
ドラマのセリフ一言でも差し替え、延期の可能性
ぽっかり空いた放映期間はどうなる?
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