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上司のパワハラが悪化、ポストコロナの「新しい生活」に絶望する人たち

 厚労省が発表した「新しい生活様式」では、ソーシャルディスタンスの確保や衛生面の注意など“コロナありき”の過ごし方を紹介しているが、約2か月の外出自粛期間を経て、おおむね“日常”が戻りつつある。しかし、なかには6月からの新しい生活が「以前と何も変わらない」苦痛なものになったという人も……。

「新しい生活」に絶望した人たち

絶望

写真はイメージです(以下同)

 東京都内の旅行代理店勤務・加茂孝之さん(仮名・30代)がうなだれる。 「6月1日から通常勤務に戻りましたが、朝7時に起き、満員電車に乗って9時には出社。もうこの時点でヘトヘトで、以前の生活はこんなにも苦しかったのかと。そして、またこの生活に戻ってしまったのかと唖然としました。それに加えて、上司や同僚と、仕事とは関係のない無駄なやりとり……。  いま旅行業界は本当に窮地に立たされており、派遣社員などは出勤日数を制限されています。そんななか上司は、仕事を取ってこい、と一方的にハッパをかけるのですが、取れるわけがない。こいつら、まだ根性論なのかと」(加茂さん、以下同)  加茂さんにとって新しい生活様式は“希望”そのものだった。コロナウイルスから身を守るべく、徹底的に無駄を省き、効率的に仕事や生活を行なっていくもの、と理解していたからである。  2か月ぶりの職場は、こうした新しさに溢れているのだろうと期待を持っていたが、何も変わっていないどころか、上司から発せられる根性論は、より空虚に、そしてパワハラ度も強化されたものだった。 「丸2か月間、完全リモートワークでした。自宅で仕事ができるわけがない、と言われてきたことも、必要に迫られればできた、というのが本音。実際、仕事の合間に洗濯や掃除をしたり、食事を作って食べたりして、出社するといかに時間的な拘束が多いのか、実感していたところだったんです」  都内の通信会社のシステムエンジニア・後藤啓介さん(仮名・20代)は、3月の終わり頃から一度も出社せず、自宅で主に銀行系に納入するシステムの構築、保守作業を行なった。以前は朝9時には職場に着き、夜20時頃まで仕事をし、月の半分は22時ごろまで残業をこなす日々だった。システムにエラーが出るなどトラブルが発生した時は、休日でも自宅で仕事せざるを得なかった。 「この2か月の間にも、急な仕事の電話がありましたが、ずっと自宅でしたから対応も楽。通勤で往復2時間かかりますから、1日13時間近く仕事に拘束されていた頃よりは全然マシでした。6月になって出社が義務付けられ、また毎日企業のサーバー室で過ごす生活。窓もなく、クーラーも効いていて寒い。さっそく体調がおかしくなって風邪気味になり、同僚からは『コロナじゃないだろうな』と疑われる始末です」(後藤さん)  時間に融通がきき、陽光とさわかやな風に当たりながら自宅で仕事ができた2か月間は「天国のよう」と思い返す後藤さんにとって、新しい生活は「昔のツラい日々」そのものだったのだ。
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以前より苦痛になったと感じる人も…
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