憧れの職業に就いた私がなぜこんな目に…コロナで狂った歯車
コロナが世の中を大きく変えた。国内では「GoToトラベルキャンペーン」があったとはいえ、海外への移動は未だに難しい状態。また、“三密”を生み出すイベントなどは軒並み中止となり、現在は入場者数の制限のもとでようやく再開されつつもあるが、以前のようにはいかなくなってしまった。
そこで働いていた人たちのなかには、窮地に立たされ、人生設計を再考せざるを得なくなってしまったケースもある。「私の仕事は誰にでもできるものではない」とプライドをもってのぞんでいたはずなのに、それが裏目に出て……。
「自分は選ばれた人である、人よりも優れている……そうどこかで思っていたんです」
千葉県佐倉市の飲食店に現れたのは、外資系大手航空会社社員で、今年5月まで国際線内で客室乗務員として活躍していた堀口真奈美さん(30代・仮名)である。大学卒業後、国内大手航空会社の子会社に入社したが、ステップアップしたいと経験を積み、語学勉強をして、今の会社に転職。収入も以前より増え、同年代男性の平均収入と比較しても遜色ない程度にアップした。
「客室乗務員になりたいと思ったのは幼稚園の頃。父が海外駐在員で、国際線に乗る機会が多かったんです。英語も得意でしたし、モデルをしていたこともあり、容姿についても不安はなかったんですが、第一希望の航空会社にはご縁がありませんでした。子会社に入ってみたものの、思い描いた仕事とは違っていて……」(堀口さん、以下同)
いま振り返ってみれば、「私は人より優れているはず」という思いがあったという堀口さん。同じ志を持った仲間たちが大手航空会社への内定を勝ち取ると「おめでとう」と喜んだが、内心は穏やかではなかった。
逆に、客室乗務員としては採用されず、グランドスタッフなど地上職員になった仲間たちには「チャレンジを続けよう」と励ましつつ、見下した。兎にも角にも「客室乗務員になれた」自分を及第点とし、成功した仲間と肩を並べるべく奮闘したのである。
「外資に籍を移して、仕事の内容はそれほど変わらないのに、環境や人付き合いは一変しました。社内の日本人女性は外国人の夫を持つ人も少なくない。私もあと数年働いて、社内の外国人男性と結婚したいと考えていました。そこまでが、私の夢だったんです」
ところが、このコロナ禍である。堀口さんの搭乗回数は5月までには完全にゼロになり、無休の休暇に入るよう会社から命じられた。堀口さんは海外の本社採用ではなく、アジアエリアの採用ということで、真っ先に契約を打ち切られる立場であることも今更知った。
契約社員はすでに会社を去っており、堀口さんのもとに辞めるか辞めないかの「最後通牒」が来る日も近い……。
「私は特別、普通の人とは違う、世の中に必要とされる人間だと思っていました。小さな女の子たちの憧れの職業についているとも思っていました。私の代わりはできないとも感じていました。でもコロナのおかげで移動が必要なくなると、私は真っ先にいらない人間になった。前にいた会社の同僚は、今も機に乗って活躍している。私ってなんだろうと自問自答する日々です」
なるには「狭き門」をくぐらなければならない、ところがその仕事は「潰しが利かないもの」であり、コロナ禍で転落してしまった……という例は他にも。
「私は人より優れている」と思っていたけど…
コロナで狂った歯車
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