元セクシー女優の転職後。月収80万円から時給1000円でも仕事を続けられるのか――大反響・傑作選
過去5万本の記事より反響の大きかった傑作選。今回はレアな職業から転職した人に注目する。(初公開2022年10月10日「元セクシー女優の昼職転職記」全12回中の第4回 記事は取材時の状況)
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フリーライターのたかなし亜妖と申します。WEBコラムや映画・漫画レビュー、時にシナリオなどジャンル問わず文章を書く日々です。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。なんとなく入った業界で気づけば2年半が経過したところで、引退を決意しました。
その後は何事もなかったかのようにシレッと昼の世界へ出戻り。ライターになり早4年が経とうとしています。
前回は「元セクシー女優」という過去を隠して臨んだ面接についての話を書きましたが、今回は収入面について書いていこうと思います。
満員電車に揺られ、足早に会社へと向かう。某地下鉄は音楽フェスのように人がごった返し、車内は乗客同士の体がぶつかり合っている。前回の記事の終わりにも書いたが、私は朝の電車などもう何年も乗っていない。
モッシュ状態の満員電車に耐えながら目的地に到着したが、その時点で1日の仕事を終えたかのような疲労感を覚えていた。2年半ナマケモノのような生活を送り、撮影のある日は全て車移動。セクシー女優は肉体労働ではあるものの、普段から習慣的に体を動かしていなかったために、すっかり体力が失われていたのである。
出勤後は人事部の美しいお姉さまに出迎えられ、オリエンテーションを行った。そして早々に所属部署の作業場へと移動。もうシナリオ執筆に取り掛かるのか? と思いきや、初仕事はなんと「取り扱いタイトルの漫画を読むこと」だった。
IPもの(※)であることから原作の設定を壊すことなど言語道断だ。さらに担当するゲームはすでにリリース済みなので、シナリオの傾向や基本的な仕様などを把握せねばならない。
いくら物語が書けるといえど、今までと毛色が異なるモノを作り出してしまえばユーザーは困惑してしまう。
新たなチームメンバーが加わることにより世界観の認識がぶれ、開発者同士でズレが起きることを防ぎたい……との意向で、まずは隅々まで漫画を読むよう指示された。
出社して、オリエンテーションを終えて、軽い自己紹介を終えて漫画を読む。他の人がカタカタとパソコンで作業をしている横で、のんびりお茶を啜りながら読書をするのは何だか気が引けた。
せっかく今日から社会へ復帰したのに、やっていることはニート時代と全然変わらなかったからである。
こんなことで時給をもらっていいのだろうか、と申し訳ない気持ちになりつつ、初日が終了。
ちなみに初出勤から1週間くらいまでは漫画を読むか、アニメを観るか、ゲームをいじるか、会議に参加するくらいのことしかやっていない。もちろん会議もその場に居るだけで、メンバーの意見交換に耳を傾けるだけの係だった。
※IP……Interllectual Properyの略称でアニメや漫画の版権を指す。つまり「ソシャゲのIPもの」とは元ある作品をゲーム化しているということ。
作業場で自己紹介をした初日のこと。私は大勢の人を前にして蚊の鳴くような声しか絞り出せなかった。もともとコミュニケーション能力が高い方ではないが、思っていた以上に緊張しいで、“自分の意見を伝えることが苦手すぎる問題”に直面する。
セクシー女優時代は周りとうまくやれていたように感じたが、それはスタッフやマネージャーが気を遣って合わせてくれていただけ。私は彼らの気遣いを自分の実力と勘違いしていたのだろう。
蓋を開けてみればただのコミュ障で、チームメンバーに話しかけられると言葉が出てこなくなる。頭では色々と考えているのに要点がまとめられず、結果的に何が言いたいのか分からない発言を繰り返していた。
職場の人は優しかったので、私が「あうあう」と慌てていると助け舟を出してくれる。中にはニュアンスでなんとなく考えを汲み取ってくれる上司もいた。
嬉しい気持ちと、もういい大人なのに……という自分に対する情けなさが同時に襲ってきて、悔しくてたまらない。何も言わなくても察してくれる撮影現場がいかに有難いものかを、卒業後に思い知った。
念願の初出勤、漫画を読んで1日が終わる
想像以上にできない「ダメな私」
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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Twitter:@takanashiaaya
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