「かき揚げそばとコロッケ単品で」他人の食券をネコババして…“駅そば店員”が頭を悩ませる迷惑客
移動の合間を縫って食事がとれる駅そばは勤め人にとって誠に重宝な存在だ。特に、近年減ってきているホーム店は移動手段(=電車)のすぐ横で営業しているのだから究極のファストフードと言えるかもしれない。
ただ、早さを追求する駅そばの注文システム故に、お客との間にトラブルが生じることも少なくない。
「あれ、いなり寿司は?」
そば提供時、1日1回はお客からこのような問い合わせを受ける。どうやらこのお客はそばといなり寿司の食券を渡したつもりのようだ。しかし、筆者が受け取ったの食券はそばの1枚だけ。
「もしかしたら食券が券売機の受け取り口に残っているかもしれません」
筆者がこう促すや、お客は腑に落ちないという表情で店外の券売機に行き、戻ってくるや「ごめん、これも」と若干の照れ笑いとともにいなり寿司の食券を差し出すという展開だ。
筆者が働いている駅そば店の券売機は食券を2枚購入した場合、1枚目と2枚目が受け取り口に落ちてくるタイミングに若干のタイムラグがある。冒頭のような注文内容の相違が生じる原因のほとんどがこれだ。
自分が買った食券の枚数くらい確認してくれと言いたくなるが、それだけ駅そば店を利用するお客は急いでいるということなのだろう。
この取り忘れた食券が次に券売機に並んでいたお客の手に渡ってしまったら問題はややこしくなる。大抵は「券売機に食券が残っていたんだけど」と親切に届け出てくれるのだが、中にはどちらも自分が購入した体(てい)で、
「かき揚げそばとコロッケ単品で」
と2枚の食券を差し出してくるお客も少なくない。
当然、最初に来店したお客は提供されたそばにコロッケがのっていないことに疑問の声を挙げる。ほぼ同時にかかる店員の「かき揚げそば、単品コロッケのお客様。お待たせしました」という呼び声。店内に不穏な空気が流れる瞬間だ。
この場合、2人目のお客が単品コロッケの食券をネコババしたことは店内にいる全員がお見通しなのだが、一応店員は券売機の購入履歴データを確認の上で最初のお客にコロッケを提供し、次のお客からはコロッケ代をいただくという流れになる。
それでもネコババされかけた方の恨みは晴れないようで、食べ終えるまで件(くだん)のお客を睨みつけるようにそばを啜っていた。
さらに、ネコババならまだしも筆者は一度、別のお客が取り忘れた「カレーライス」の食券の払い戻しを要求されたこともある。
その時は渡された2枚の食券の購入時刻を見て、「ずいぶん時間が開いていますけど、どちらもお客様が購入されたものですか」と聞くや、「じゃあ違いますね」という一言。油断も隙もあったものではない。
このように券売機や食券で購入履歴はごまかし通せるものではない。もし券売機に食券が残っていたら店員に報告するか、そのままにしておいてもらいたい。狭い店内でネコババした方とされた方が顔を突き合わせながら食事をともにしている光景はこちらの胃まで痛くなりそうだ。
頻繁に起きる食券の取り忘れ
食券のネコババで店内が不穏な空気に
1
2
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ
日刊SPA!の人気連載