“発信”していく場所に変貌したアキハバラ
―[脱マニア化する秋葉原の今]―
電気街、パソコンの街、オタクの街としての“マニアック”なイメージを生んだ秋葉原。しかし、家電店やPCショップの老舗が消え、同時にマニアでない人々の流入で変化が起きている。そんな秋葉原の“今”を追った
◆発信していく場所に変貌したアキバ
「最近の秋葉原は自分から発信したいという人が増えています」
そう話すのは、クリエーターズカフェ「秋葉原製作所」の谷本優紀子さん。’09年に開店して、利用者が増え続けているという。
「もともと、秋葉原に同人誌などを買いに来る方は、自分で作品を描いている人も多い。今まではこういう場所がなかったので、自宅や少人数で部屋を借りて、ひっそりと描くしかなかった。そういう人たちが、秋葉原に出てくるようなったんだと思います」
さらに、ネット上に自分の作品を気軽に投稿できる動画サイトなどが普及したことも大きいという。
「今は自分の作品を投稿すると、ほかのユーザーから評価がすぐにわかる。それで、『今度は本を出してみたい』という感じで利用される方が増えています。実際に、ソフトや画材を揃えるのはお金が掛かかるので、それらが揃っていて気軽に始められるためにウチのような場所がウケているんでしょう」
そんな表現者や職人たちが集まるクリエータースポットが、秋葉原で近年増えている。’10年には、「ものつくり」をテーマに秋葉原と御徒町を繫ぐ高架下に「2k540 AKI-OKA ARTISAN」が誕生。今までのアキバイメージとは異なった、日本の伝統工芸品や革製品などのアトリエ工房が立ち並ぶスペースだ。
「全国から集まった職人が秋葉原から注目されて、広がることは嬉しいですね」(男性職人)
また、アートギャラリー「アーツ千代田3331」は、「クリエーターが生まれる環境」としての秋葉原に注目しているという。
「電気街の時代から、『つくる』ための部品を販売している秋葉原には、製作意識や意欲が溢れている。そこに人や物流、情報、独自の文化などのさまざまな要素が掛け合わさっていることが最大の魅力だと思いますね」(広報担当者)
同ギャラリー内では、さまざまなアーティストのレンタルオフィスやコミュニティスペースが設けられている。また、今年は漫画家・大友克洋氏の原画展やAKB美術部の展覧会を開催。ジャンルの垣根を越えた企画は、創設から2年がたち、「地域密着型で、さらに幅広い世代の方に利用してもらいたい」という意図があるそうだ。
「新しい企画展を通して、さらにクリエーティブな意識を持った人が集まることを実感できた。今後もこのような活動を通して、秋葉原に集まる人たちの意識を活性化させていきたいです」(同)
オタクが“お宅”に籠もる時代から、ネットで人と交わり発信するようになり、このような変化が秋葉原の街にも起きているのかも。
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