犬または猫を10匹以上飼ったら罰金 or 懲役刑!
―[おかしなルール報告書 Vol.1]―
アニメやマンガの性表現を規制しようと、「非実在青少年」という概念を持ち出した東京都の「青少年育成条例改正案」が、表現の自由を奪いかねないと騒動になったのも記憶に新しいところ。だが、この世はすでに施行されている”おかしな”法律や条例がたくさんあるようだ。これらのルールは果たして”悪法”か?
【対象】ペットが好きな人
犬または猫を10匹以上飼ったら罰金 or 懲役刑!
「犬や猫は一度に5、6匹産むこともあるので、10匹なんてすぐ。オスとメスを飼っている人は鳥取県に引っ越せなくなりますよね」とのり・たまみ夫妻が首を傾げるのが『鳥取県民に迷惑をかける犬又は猫の飼育の規制に関する条例』(’02 年12月13日施行)だ。条例を要約すると、知事が指定した”規制区域”での犬や猫の「多頭飼育」を禁止し、違反した者には6月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるというもの。「多頭飼育」とは犬と猫を合算して10匹以上飼うことだ。
しかし、なぜこんな条例ができてしまったのだろうか? 実はこの条例、100匹近い犬を住宅地で飼い、騒音や悪臭で住民とトラブルになった業者を追い出すためのものだったらしい。鳥取県庁によると、実際にはこの条例が適応されなかったとのことで、’07 年に「条例の適応期限」が設けられ、今年の3月をもってその期限が切れている。だが、一般のペット好きな人にも累が及ぶ危険性もあったのでは? ポイントを弁護士の角田氏に聞いた。
「場当たり的に制定された悪法でしたね。条例による住民の自由制限は必要最小限度なものでなければなりません。例えば鳴きわめく大型犬を9匹飼っていても罰せられることはないがおとなしい小型犬を10匹飼っていたら罰せられる不合理な内容でした。ペットを飼う自由を不当に侵害するものとして違憲の疑いすらあります」
懲役刑をもたらす条例が簡単に制定されていた怖さを感じる。
【のり・たまみ夫妻】
『へんなほうりつ』著者
夫婦のフリーライターユニット。世界10か国に滞在するなかで各国の法律に興味を持ち、独学で学ぶ。『へんなほうりつ』(小社刊)など、法律関連の著書多数
【角田龍平氏】
元芸人弁護士
’76年生まれ。「おおかみ少年」というコンビで漫才をしていたが解散後、弁護士に。現在は『サンデージャポン』(TBS系列)の準レギュラーとしても活躍中
イラスト/テラムラリョウ
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