[おかしなルール]400平方メートル以上の一軒家しか建ててはならない!
―[おかしなルール報告書 Vol.1]―
アニメやマンガの性表現を規制しようと、「非実在青少年」という概念を持ち出した東京都の「青少年育成条例改正案」が、表現の自由を奪いかねないと騒動になったのも記憶に新しいところ。だが、この世はすでに施行されている”おかしな”法律や条例がたくさんあるようだ。これらのルールは果たして”悪法”か?
【対象】お金のない人
400平方メートル以上の一軒家しか建ててはならない!
関西に名だたる高級住宅地・芦屋に、まさしく「庶民は住むな!」と言わんばかりの条例がある。『芦屋市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例』だ。この条例自体は’02 年に施行されたが、’06 年に改正され、「別表第2の11番、六麓荘町地区整備計画区域の項目オ」というパッと見では見逃しそうなところに、「建築物の敷地面積の最低限度=400平方メートル」という文言が追加された。これの意味って?
「不動産広告には『敷地面積150平方メートルの広々とした一戸建て』といった文句があるくらいですから、400平方メートル以上の一戸建て住宅というのは相当広いですよね。通称“豪邸条例”と呼ばれてますが、別名は”空気読め条例”ですかね。恐らく、『この六麓荘町エリアはそういうところだから、狭い家建てるな! 空気読めよ!!』ってことなんでしょうね」と語るのはウェブサイト「変な法律」管理人のなかむらいちろう氏。
また、『へんなほうりつ』の著者、のり・たまみ夫妻はこう指摘する。
「当時の市議会議員は24人。だから過半数の13人が賛成すれば可決されちゃう」
えー!? そんな簡単でいいの?
「同条例では、適正な都市機能と健全な都市環境を確保することを目的とすると定めてはいるものの、真の目的は高級住宅地としての芦屋のイメージを保つことにあることは想像に難くありません。適正で健全な都市というのは、富める者も貧しい者も共存する場所のはず。貧しい者を地域から排除するに等しい同条例の目的は不当です」(弁護士・角田龍平氏)
明らかに不当な条例が容易に通る地区もあるということだ。
【のり・たまみ夫妻】
『へんなほうりつ』著者
夫婦のフリーライターユニット。世界10か国に滞在するなかで各国の法律に興味を持ち、独学で学ぶ。『へんなほうりつ』(小社刊)など、法律関連の著書多数
【なかむら いちろう氏】
ウェブサイト『変な法律』管理人
’69年生まれ。立命館大学法学部卒。’00年にウェブサイト『変な法律』を開始。著書に『大爆笑「変な法律」集「俺の酒が飲めねーか」は犯罪です』(講談社)
【角田龍平氏】
元芸人弁護士
’76年生まれ。「おおかみ少年」というコンビで漫才をしていたが解散後、弁護士に。現在は『サンデージャポン』(TBS系列)の準レギュラーとしても活躍中
イラスト/テラムラリョウ
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